あの人のことば
2019年08月08日
勢いを増す2つの「アンチ・リベラル」思想の正体とは? 専門家に聞いた
リベラルやフェミニズムは“お花畑”なの? 文芸評論家の藤田直哉さんと話し合いました。
ハフポスト日本版編集部

もうひとつの変化もあります。これまでは、科学技術の進歩は、人類の道徳的進歩とセットで考えられていました。
「民主主義」や「人権」は、理性を持った人間が「進歩」によって獲得してきたものだとされています。
「暗黒啓蒙」の特徴は、そのような科学技術の進歩と、道徳的な進歩の結びつきを切り離すところにあります》

《彼らは、フェミニズムやリベラリズムに対して、「世界はあなたたちが考えているような
“お花畑”な世界ではなくて、本当はもっと暗くて残酷なんだぞ」ということを、
科学的なエビデンスに基づいて主張して攻撃する人たちです。
リベラルという虚構に洗脳されてしまった人たちを目覚めさせてあげようという感じです。

例えば最近では、人間には自由意志があるのか? という議題があります。
リベラルにとって自由意志というのはとても重要で、自由意志に基づいて個人は生きていくのだと考えています。
近代以降の社会の前提ですよね。それを彼らは時に、脳神経科学や進化論、行動経済学などを引き合いに出して、
“科学的に”否定しようとしてきます。科学技術の発展に伴って生じた新しい「人間観」によって、
これまでの価値観が揺さぶられている状況だとも言えます》

《そもそも自由も人権も科学的に実在するのではなく、近代以降の人間が『ある』と取り決めてきたもの。
その「取り決め」を積み重ねてきた結果として、現在の社会がある。
だから、単純に科学やエビデンスだけで物事を捉えてしまうと、色々なものを失ってしまうと思います。

例えば、僕たちは誰かが亡くなった時に「死後の世界で見守ってくれる」などと考えますよね。
これってファクトでもエビデンスでも何でもない。
でも、この、「ファクトでもエビデンスでもないもの」を全て否定してしまうと、人間はたぶん耐えられないと思います。
人間社会の文化はそういうもので成り立っている部分もある、と個人的には感じています。愛だってそうでしょう。