あと、表現としてはグロテスクな部類に入っても、非常に社会性や芸術性の高い作品も
ある。その代表例に、鉛筆画の第一人者である画家の木下 晋をあげておこうか。

彼はらい病患者をモチーフに、実地で綿密な取材を重ねながら、それを非常に精巧で
インパクトのある巨大な作品にまで昇華した。彼を一流の画家や表現者であると認める
ことは出来る。会田誠のような単なる愚劣なグロ表現とは次元とメッセージ性が全く違うのだ。
天井まで届きそうな大きならい病患者が緻密に描かれた彼の絵は、それらの人々が置かれた
圧倒的な、悪魔的な巨大な疎外というものがこちらに伝わってくるのだ。