「この気候変動と資本主義に対する姿勢の違いは、脱成長をめぐる日本と
欧米の言説状況にも影響している。欧米においては、気候変動問題への取り組みを
通じて、資本主義システムを乗り越えようとする要求が出てきている。そのなかで、
脱成長が新世代の理論として台頭するようになっているのである。

▼取り残される日本の政治  

それに対して、欧米の動きに比して気候変動問題への関心が低い日本では、脱成長が
「団塊の世代」、「失われた三〇年」と結びつけられている。脱成長など旧世代の理論だという固定観念が定着してしまっているのだ。そのため、この間、世界では新しい
脱成長論が出てきているにもかかわらず、その内容はまったく日本に紹介されていない。これでは、世界の潮流から取り残されてしまう。」

『人新世の「資本論」 』斎藤幸平