「マウラーがこんな指摘をしているからだ。マルク協同体は、全員が等しく
放牧などができるように共有地を用意していただけではない。構成員たちが
どの土地を使うかについて、くじ引きを導入して定期的な入れ替えを行っていた。
そうすることで、肥沃な土地の恩恵を一部の人間が独占的に占有し、富の偏在が
生じることがないように注意していたのである。  

それは、古代ローマで「ラティフンディウム」と呼ばれる奴隷労働を利用した
貴族による大土地所有・経営が行われたことと、対照的な規制方法である。
保守的な思想家であったマウラーが、歴史の中に見出したのは、当時の
社会主義者も身震いするようなゲルマン民族の「平等主義」だったのだ

『人新世の「資本論」』斎藤幸平