アメリカでは、幸福度がピークになるのは1950年代で、その頃の国民1人当たりのGDPは、
わずか1万5000ドル(現在のドルで)程度だった。以来、アメリカ人の平均年収は4倍に
なったが、この半世紀で幸福度は横ばいか、低下さえし始めた。イギリスも同様で、
1950年代以降、収入は3倍になったにもかかわらず、幸福度は低下している。

同じような傾向は、他の多くの国でも見られる。このパラドックスをどう説明すれば
よいだろう?研究者たちは、重要なのは所得そのものではなく、それがどう
分配されるかであることを発見した。所得の配分が不公平な社会は総じて幸福度が低い。
これにはいくつか理由がある。不平等は不公平感を生み、それは社会の信頼、結束、
連帯感を損なう。また、健康状態の悪化、犯罪率の上昇、社会的流動性の低下にも
つながる。不平等な社会で暮らす人々は、欲求不満、不安感、生活への不満が
より強い傾向にある。そうした人々は、鬱病や依存症になる割合も高い。