ラッセルのパラドックスは、ある集合が自分自身を含むかどうかという自己言及から生じる矛盾です。このパラドックスが発生する論理体系では、自己言及によって簡単に矛盾を作り出すことができてしまいます。
しかし、実際にはラッセルが開発した新しい論理学によって、このパラドックスは解決されました。つまり、ラッセルのパラドックスは本来矛盾ではないのです。
問題は、ラッセルのパラドックスが矛盾を引き起こす論理体系では、本来矛盾ではないものを自動的に矛盾していると仮定してしまうことです。この「矛盾ではないもの=矛盾している」という誤った前提が常に存在していることになります。
この誤った前提が存在すると、爆発律という原理が成立してしまいます。爆発律とは、矛盾から任意の結論を導き出せるという原理です。つまり、矛盾を前提とすれば、どんなことでも真とも偽とも証明できてしまうのです。
そのため、ラッセルのパラドックスを引き起こす論理体系で導かれた結論は、意味がないということになります。矛盾を前提としているため、導かれた結論が真であるのか偽であるのか判断できないからです。
したがって、ラッセルのパラドックスを回避する仕組みを持たない論理体系で得られた結論は、信頼性に欠けると言えます。ラッセルが開発した新しい論理学のように、矛盾を回避する仕組みを備えた論理体系を使用することが重要なのです。