かわいそうなぞう 

あるとき。タカラヅカ国に長く、苦しい戦争がおこりました。
動物園も、その影響をもろにうけました。
それまで、みんなの人気者だったシンセンカという種類の象にもっとも
つらい犠牲を強いることになりました。
存在が大きすぎる、という理由で、
好物の「ク実」をとりあげられてしまいました。
動物園にも、餌がもうないのです。
動物園の外に出て、それまでやったことのない芸に挑戦する場を
与えられる象もいました。慣れぬ場で、みな、空腹に耐えて笑顔で芸をします。
なかにはたまに「ク実」をたべさせてもらえる象もいましたが、
ほとんどのシンセンカ象は歯をくいしばり、芸を磨けばいつか「ク実」を
もらえる。ほかの種類の動物たちといっしょになれる、そんな日を夢みて、
みんな外での芸や、断食の日々をそれぞれがんばっていました。
それまでの過酷な日々がしんどかったのか、やっとク実をおなかいっぱい食べられる
夢の「トップ」という特別な小屋にいれてもらえた象たちも、
ほっとしたのか、すぐに力尽きていきました。
もちろん、それでもそれはとてもラッキーな一部のシンセンカ象で、
おそらくほとんどの象はみな、ク実に飢えて倒れていくのです。
明日は、餌にありつけるかなー、
おなかはぺこぺこですが、今日も芸をしています。
でも、餌がたりないから、もっと若い明日のある象にゆずったほうが
いいんだろうな、とかはらぺこのおなかのなかで
考えているのかもしれません。

檻のそとでは、観客がそんなふうに必死で芸をする象をみて、
その胸の内と、からっぽの腹を思い、ぽろぽろ泣いていました。