「もはや人間が及ぶレベルではない」

――正直なところ、勝算はありましたか?

当時、中島哲也八段が出版していた発行物の中にコンピュータ同士の棋譜(対局の記録)があったのですが、それを見たらもはや人間が及ぶレベルではありませんでした
そこから、目標は「一勝できれば良い」になっていました

――ロジステロと戦う3カ月前に、カスパロフ氏がディープ・ブルーと戦って敗れました
あの姿は脳裏にあったのではないですか?

あのカスパロフ氏の憔悴しきった姿は、今も印象に残るほどです
「人間の尊厳をかけて戦う」と宣言していたカスパロフ氏は、「コンピュータに勝つことが人間の、チェスプレイヤーの尊厳を保つ」という風に考えていたと思います
ですから負けたときの衝撃が大きかったのでは