デイヴィッド1世(1124−1153)の時代に、スコットランドで最初のコインが鋳造された。
それまで物々交換、労役提供が中心であり、外国人との交易においてさえ、物々交換で
あったスコットランドには自前のコインさえ流通していなかった。
スコットランドでは、ローマ駐留軍が築造したハドリアヌスの長城や、アントニウスの
長城跡の近辺で、ローマのコインが発見されており、また沿岸地域においても、
スカンジナヴィア人のコインが発見されている。
したがってスコットランド人がコインの存在を知らなかったわけではないが、彼らの経済が
それを必要とするほどに至っていない、きわめて未熟な状態にあり、さらには国家とは
いいながらコインを発行する技術能力もなければ、その必要にも迫られず、あるいは
政府としてコインに対する信用を国民から得られないという、極言すれば原始経済社会に
近い状態にあったということであろう。