歴史には一族が死に絶えて自分だけ生き残ってしまった者がいる。しかも自分が預かり知らぬうちに…。

明の方孝孺は永楽帝の即位に反対して一族どころか友人弟子まで処刑された。ところが、ただ一人だけ生き残った者がいる。従弟の方孝復だ。
孝復は別件で罪を犯して僻地の守備兵として流刑処分になった。孝孺が従弟のために奔走した形跡は、ない。
ところが運命は皮肉なもので、流刑処分にされていたことが幸いした。永楽帝と側近達は孝復を見落としたのだ。あまりに処刑する人数が多すぎて、流刑囚にまで目が行き届かなかったのか。こうして孝復は一族でただ一人生き残った。