習近平が仕掛ける「清朝」歴史戦争
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190216-00010001-newsweek-int&;p=1

政治、文化、道徳、経済、外交......。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、
実にさまざまな分野でイデオロギー戦争を指揮している。

なかでも最大の火種は歴史、特に最後の中華帝国・清(1636〜1912年)の歴史だ。
習のイデオロギーに合わせて過去を書き換えようとする動きに抵抗する歴史家は、
繰り返しプロパガンダ機関による攻撃の標的にされてきた。

習には強力な武器がある。03年に共産党が立ち上げた清代の歴史編纂プロジェクト(清史
工程)だ。
この野心的な国家事業には、3つの使命が与えられた。

第1に、伝統の継承。中国の歴代王朝は、前王朝の「正史」を完成させることで政権の正
統性を誇示してきた。
だが1912年の清滅亡後、後継の新王朝は現れなかった。中華民国時代には王朝支持派が正
史形式の未定稿
『清史稿』を編んだが、民国政府は出版を禁止。21世紀に入り、共産党が清史の編纂と出
版を決定した。
その編纂事業は間もなく完了するとされている。

第2に、清史関連のあらゆる史料のデジタル化。14年までにデジタル化された文書の画像
ファイルは
計150万件と言われ、最近の発表によれば200万件に近づいている。

第3に、清代に関する外国の研究成果を全て翻訳することだ。ただし、この作業は清代の
評価をめぐる
激しい闘争の舞台ともなっている。習は清史工程を、自身の歴史解釈に対する中国の
伝統的マルクス主義史観と、外国の清朝研究者の挑戦を打破するための道具にした。