ポール・ヴァーホーベン御大の最新作。
17世紀に同性愛で告発された実在の修道女の半生を描いた物語。
いやー面白かった!

幼い頃からキリストを幻視し続け、ついには奇蹟や聖痕スティグマまで身体に起こしたベネデッタ。
彼女の信仰体験のどこまでが本当の奇蹟でどこまでが狂言なのか、その境目を曖昧なバランスで描くことによって、皮肉めいたことに教会の欺瞞と宗教というシステムの破綻を証明してしまうのがヒジョーに巧みで秀逸。

ヴァーホーベンといえば昔から男女同権、ことさらセクシャルな描写で裸裸裸を撮ってきた監督だけど、
冒頭から鳥の糞や放屁ファイヤー、女性二人の排便シーン、聖マリア像をディルド代わりのアイテムにするなどヴァーホーベン節が炸裂。
セックス、暴力、拷問、黒死病といった中世暗黒時代のインモラルな描写が連続しても、全編に行き渡る文芸エロスのような上品さを漂わせるのは御年84になられた御大のなせる業なのか。
キリストを幻視しながらも、性的快楽が現実的に勝ってしまうのも面白い。

ベネデッタの行動が嘘であれ真実であれ、ヴィルジニー・エフィラの演技を見れば彼女はどこまでも「敬虔な修道女」だったんだなと思わざるを得ない。
また修道院長役のシャーロット・ランプリングの荘厳な佇まいは流石の一言。

同じくペストが大流行してる17世紀のフランスの修道院での実話騒動を描いたケン・ラッセル監督の『肉体の悪魔』を思い出さずにはいられん。
描いてるテーマは本作とは全く似て非なる映画なんだけど、拷問器具「苦痛の梨」が出てきた時は「あああー!」ってなりましたね。
傑作なのにいまだに円盤化されてないのほんと意味わからん。

かつてのパワフルさはさすがに鳴りは潜めたものの、
とにかくポール・ヴァーホーベンと言う人はどこまでも信用できるだなと改めて実感した傑作でした!