半導体業界の事業開発には、最低 3兆円の資金調達が、必要なんだな。

2020年5月14日は、世界半導体産業の歴史に刻まれる日になる――と直感した。
この日に、次の2つの “重大な事件” が明らかになったからだ。
(1)台湾のファウンドリ(半導体受託生産メーカー)TSMCが、120億ドルを投じて、
12インチウエハで、月産2万枚の半導体工場を、米アリゾナ州に建設することを発表した。
(2)同日、米商務省が中国のファーウェイ(華為技術)への輸出規制を強化すると発表した。
それを受けて、TSMCは、2020年9月以降、ファーウェイ向けの新規半導体の、出荷を停止する。

ここ数年、TSMCは、米中ハイテク戦争に揺さぶられ、両大国からの綱引きにあっていた。
しかし結局、TSMCは、中国ではなく、米国に付くことにしたわけだ。

TSMCにとっては、ファーウェイ向けの半導体受託製造ビジネスは
全売上高の約15%を占めており、これは最大顧客の米アップルに次ぐ規模である。
にもかかわらず、全面的に米国の要請を受け入れたのは、
TSMCの売上高の約60%が、米国向けだからである(図1)。

TSMCが、120億ドルを投じる半導体工場は、2021年に着工し、2024年から月産2万枚で、
5nm(ナノメートル)プロセスの量産を開始する。120億ドルの投資は、2021〜2029年の
長期間としており、月産2万枚で留まらず、もっと規模を拡大すると予想される。
というのは、TSMCの台湾の工場群の、半導体製造キャパシテイは、
12インチウエハ換算で、月産約110万枚もある。

120億ドルを投じる米国の半導体工場が、わずか月産2万枚で留まるはずがない。
また、TSMCは、台南のサイエンスパークに、
2022年に157億ドルを投じて3nmプロセスによる 量産を開始する。
したがって、いずれ、米国工場にも3nmプロセスをコピーするだろう。
TSMCの米国の半導体工場建設が差し止め・・・などと想像していたら、 3人の米上院議員が、
TSMCの米国工場建設に待ったをかけた。 この記事の中で、TSMCの元主席弁護士は、

「TSMCが、アリゾナ州を選んだのは、『知事が、共和党の州を支援したい』という
トランプ大統領の、都合が優先されたためだろう」と述べている。