総括

榛名ベースの「新党」においては、「総括」と称する、内部でのメンバーに対する批判や
自己批判がエスカレートするようになった。総括とは、本来は過去を振り返る「反省」を意味し、
当時の左翼政治運動家の間で好んで使われた思考法であった。連合赤軍において、

総括対象者は最初は作業から外されるだけだったが、間もなく「総括に集中させるため」として、
長時間の正座、食事を与えないなどされ、ついに殴打が加えられるに至った。

この際に連合赤軍の最高幹部は、殴って気絶させ、目覚めたときには別の人格に生まれ変わり、
「共産主義化」された真の革命戦士になれるという論理を展開した。この暴行はあくまで

「総括」のための「援助」であるとされた。暴行の対象者は、日を追うごとに増えていき、
死者を出すに至ったが、これを「総括できなかったための敗北死」とし、
方針が改められなかったため、死者が続出することになった。被害者らの死因は、

殴打による全身打撲や内臓破裂、氷点下の屋外にさらされたための凍死、
食事を与えられなかったことによる、衰弱死などであるとされる。

一部のメンバーは「組織に対する裏切り」と断定され、「死刑」を宣告された。
この「死刑」は、相手を殺害することを目的としたもので、アイスピックやナイフで
刺された後に絞殺された。1971年12月末からの約2ヶ月の間に、死亡したメンバーは12人にも上った

犠牲者の中にはメンバー同士で恋仲であった者、兄弟であった者もいた。中には妊娠していた
女性メンバーもいた。証拠隠滅のため遺体は、すべて全裸で土中に埋められた。

連合赤軍事件の、他にも多くの政治的過激派組織による殺人事件は発生しているが、
当事者による事件の詳細な経緯の発表はほとんど行われておらず、
事件の実態は闇の中となっている場合が多い。そのような中にあって、

本事件は事件を、批判的に捉え返した詳細な記録が、複数の当事者により発表されており、
事件の実像に迫りやすいという点でも特異な事件である。