マルクスは「自分は唯物論者だ」と書いたり発言したりしたことは一度もない。
「唯物論とは何か?」という問題について主題的に考察した著書も草稿もない。
しかし「フォイエルバッハ・テーゼ」を読むと、自分が唯物論者であることを当然の前提とした書き方をしている。
だからマルクスが唯物論者であったこと自体は間違いない。

マルクスの「資本論」は、“価値”などという、考察者の目から見れば幻想に過ぎないものにもある種の客観的実在性を認めている。
その意味でマルクスの唯物論(マテリアリズム)は俗流唯物論のようなタダモノ論ではない。
後世の我々の見地から、ヘーゲルも視野に入れながら唯物論を「観念に対して質料の第一次性を何らかの意味で認める思想」と考えれば、
資本論でのマルクスも確かに唯物論に立脚している。