スウィージー『独占資本』もカレツキを参照していた
カレツキの功績は独占度合い表す数式を明らかにしたことだ
資本主義万歳でも国家計画経済万歳のどちらでもない
検証可能にしたということだ

鍋島直樹論考
カレツキアンの経済学とカレツキの経済学資本主義の長期発展理論をめぐって
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshet1963/36/36/36_36_77/_pdf

 カレツキは, 資本主義経済においては, 寡占ないしは不完全競争が通常の状態であるということをかなり
早い時期から認識していた。「独占は, 資本主義体制の本質に深く根ざしているように思われる。自由競争は,
1つの仮定としてならば, 一定の研究の初期の段階においては有用であろう。しかし, 資本主義経済の通常の状態の
描写としては, それは単なる神話にすぎない」(Kalecki [1939]P. 252, ページは『カレツキ全集』(Kalecki [1990,
1991, 1997])による。以下同)というのが, 彼の一貫した見解であった。こうして彼は, 新古典派経済学における
完全競争という仮定の非現実性を衝いたのだった。

 この1938年論文において, カレツキは, 産業の多くの部門はしだいに寡占的となり, さらに寡占はカルテルへと展開
してゆくので, 集中が進行することによって独占度は疑いなく上昇傾向をもつであろうという見解を示している。さら
に, 独占度の上昇の影響が原材料価格の低下によって相殺されつづけるのは必ずしも確実なことではなく, もしそうで
ない場合には, 肉体労働者の相対的分け前は低下しつづけることになるであろうと言う(ibid, pp. 17-8)。独占度が歴史的に
上昇する傾向にあるというのは, 価格と分配の独占度理論を構築する途上にあった初期から晩年にいたるまでカレツキ
が一貫して保持しつづけた見解である2)。
 以下では, カレツキの独占度理論の代表的説明と一般に見なされている『経済変動の理論』(Kalecki [1954]ch. 2)に
したがって, その理論的構造をみてゆくことにしよう。まず, ある産業における付加価値, すなわち生産物価値マイナス
原材料費は, 賃金・共通費・利潤の合計に等しい。ここで, 賃金総額をW, 原材料費総額をM, 総主要費用(賃金総額プラス
原材料費総額)に対する総売上高の比率をkで表せば,
  共通費+利潤=(k-1)(W+M)
という式を得る。これより, 1産業における付加価値に占める賃金の相対的分け前は, 次のように表現される。
  w=W/{W+(k-1)(W+M)}
ここで, 賃金総額に対する原材料費の比率をj で表せば, 次式を得る。
  w=1/{1+(k-1)(j+1)}
したがって, 付加価値に占める賃金の相対的分け前は, kに反映される独占度と, 賃金総額に対する原材料費の比率で
あるjとによって決定されることが分かる。さらに, 製造業全体に占める特定の産業の重要性の変化を除去するような
調整を行なえば, 製造業全体についての公式を得ることができる。…