>>885
訂正→いかなる鋳貨

川越論考はマルクスの可能性を開くもので興味深い。川越はマルクス『経済学批判』を引用している、

《「 貴金属の高い価値比重、恒久力をもち、相対的意味では破壊されず、空気にふれても
酸化しないという性質、とくに金のばあいは王水以外の酸には溶解しないという性質、こうし
た一切の自然的属性が、貴金属を貨幣蓄蔵の自然的材料たらしめている。だからチョ
コレートが非常に好きであったらしいペテル・マルティルは、メキシコの貨幣の一種であった
袋入りのココアについて、つぎのように述べている。『おお、いみじくもよき貨幣よ、おまえは
人類に甘美にして滋養のある飲物をあたえ、その罪のない所有者を、貪欲という業病から
まもってくれる。なぜならば、おまえは、地中に埋蔵されることも、長く保蔵されることもでき
ないのだから。』」[『新世界について』《アルカラ、一五三〇年、第五編、第四章》]
(マルクス1956[岩波文庫『経済学批判』]、第5章4節、202~203ページ)》

これについて川越はこう述べる。

 《つまり、メキシコではココアのような耐久性のない財が貨幣として用いられており、それが
貨幣蓄蔵という貪欲さへの抑止力となっていたことが指摘されている。実験においても、非耐久財が
貨幣になる可能性があることが示されている(川越2003☆ ; Kawagoe 2009)。》『されどマルクス』94頁


『現代の金融と地域経済 下平尾勲退官記念論集』所収
「非耐久財は貨幣となりうるか?実験研究によるアプローチ」川越敏司