ピーター・F・ドラッカーが、「新入社員が会計を1年勉強すれば、合法的に利益操作をするのはいとも簡単」であると述べているくらいだ。

 ドラッカーが特に指摘するのは、「減価償却」という魔物である。グレアムも「証券分析」の中で、減価償却の適用方法を合法的に変更するだけで、まったく同じ会社の同じ年の決算を、
巨額の利益から赤字に変身させることができることを、ケース・スタディを示して詳細に解説している。

 つまり、いくら企業の決算を会計士や取引所が厳重に監視しても、合法的に「偽装」できるのだから、決算書を信じすぎてはいけないということだ。

 その点で、今最も注目すべきはソフトバンクであろう。ソフトバンクの問題点については、6月14日の記事「まさかとは思うが『ソフトバンク・ショック』はありえるのか?」、10月6日の記事「やはり『ソフトバンク・ショック』がやってこようとしている…のか?」、
11月15日の記事「ソフトバンク・ショックがいよいよやってくる、のか?」で詳しく述べた。

 ソフトバンク決算上の利益と納税額の食い違いが一時話題になったが、そのようなことも「合法」の範疇である。世間では、「儲けているのに税金を払わないとはけしからん」という論調が多いが、
私は「決算書では儲かっているが、本当は儲かっていない」リスクの方がはるかに大きいと思う。