明治維新以来、日本の学校での英語教育では、限られた授業時間をスピーキングとリスニングを犠牲にして、
リーディングに集中させることで、文献読解を通して英米の最新情報と教養を身に付けるという学習目標は
それなりに達成されてきた。高校生が大学入試でラッセルやモームを原文を読んだり、大学入学後、
すぐに原書購読などに対応できていたのだからたいしたものだ。

しかし近年は国際化だのコミュニケーション重視だのを旗印に、授業時間を増やさないまま、
無理やり四技能を授業中に詰め込むという無謀な企てが実行されようとしている。
おそらくそれにより、日本人英語学習者のほとんど唯一の取柄だったリーディング能力も著しく低下し、
大学に入ってもまともに英語の専門書や論文が読めず、結局四技能ともに、実用的には使い物にならない
中途半端なレベルの英語力しかない日本人が大量生産されることになるのだろう。
ネイティブの英語教師と「英会話ごっこ」をするのが実用的な英語教育だと勘違いされているところに
この国の悲劇がある。