競走馬にとっての蹄鉄とは、人間にとっての靴のようなものであり、人間が自分に合った走りやすい靴を履かなければまともに走られないのと同じで、競走馬も自分の蹄にフィットした蹄鉄を履くことによってこそ、ベストパフォーマンスをすることが出来る。

従来の装蹄は、馬の蹄に蹄鉄を釘で打ち込んでいくのだが、ディープインパクトの出現により広く世間に知られるようになった、「エクイロックス」という接着剤を使った装着技術がある。

実は走る馬ほど蹄が薄い。なぜなら、馬が強ければ強いほどトレーニングを課せられる→強いトレーニングを消化すると脂肪が減り皮膚が薄くなる→蹄は皮膚が角質化したものなので、皮膚が薄くなればなるほど蹄も薄くなってしまうからである。
走る馬というのは生まれつき皮膚が薄かったりもする。

また、走る馬ほどキック力が強いため、蹄鉄の減りも早く、蹄鉄を打ち替えなければならないサイクルもまた早い。
蹄鉄を釘で打ち込む頻度が高ければそれだけ蹄が傷んでボロボロになっていくのは当然で、だからこそ、走る馬ほどより接着装蹄を必要とするのだ。

そういった意味においては、ダービーを勝ったウオッカを始め、関西のほとんどの有力馬の走りは、このエクイロックスを使用した接着装蹄を担当する西内氏の腕にかかっていると言っても過言ではない。
そして、いずれかは、物理的に可能な限りにおいて、ほぼ全てのサラブレッドがエクイロックスを使用した接着装蹄の恩恵を授かり、脚元に気をつかうことなく、能力を十全に発揮できるようになる日が来るだろう(接着装蹄ではほぼ100%落鉄することもない)。
大袈裟に言うと、下駄を履いて走るかそれとも運動靴かというぐらい違うのであって、それぐらい大切な技術なのである。