現れた勇者の名は「気高く、勇ましく」を意味するフィエールマン。今年、古馬の牡馬で唯一、芝GT(天皇賞・春)を勝った馬である。
事実、前走の天皇賞・秋はアーモンドアイに屈服(2着)した。
それでも女帝にすれば、全GT9勝で最小着差(半馬身)の辛勝でもあったのだ。そう、これが男の意地。

管理する手塚貴久調教師が悔しげに前走を振り返る。

「普通のスタートを切ったけど、直後に両サイドから挟まれて位置取りが後ろに…。
さらに直線も外に持ち出すタイミングがワンテンポ遅れてしまった。
直線はものすごい切れ(上がり3ハロン32秒7は出走馬最速)を見せてくれたけど、もう少し前で流れに乗れていれば、さらに際どい勝負になったかもしれない」

 敗戦の中の光明、それは歴史的名馬に準ずる力量の再確認でもあった。だからこそ男は立ち上がる。
有馬記念初参戦の昨年は4着に終わったが「今年は買い材料がふんだんにあります」。
担当の名畑俊助手もリベンジの決意を高らかに宣言する。


 これまで中山コースは山藤賞(1勝クラス)1着、GUアメリカJCC2着、そして有馬記念4着。決して相性抜群というわけではないが、同助手がそれでも勝算を口にするのは昨年と明らかに異なる戦況だからだ。

「昨年は先行馬総崩れの差し、追い込み決着。その流れにあって、人気のアーモンドアイを4角で捕まえに行く競馬は相当タイトだったはずです。
つまり4着ながらも中身は濃く、今年はメンバーも昨年ほど強烈じゃありません。
何より最大のプラス材料は、馬を最も知るルメールさんが騎乗することですよね。さらに有馬記念はレース90分前に集合がかかるんですが、今年から80分前に短縮されたのも気性的に好都合。2着に終わったAJCCは熱発明けだったし、決して中山が苦手な馬ではないですよ」

https://news.yahoo.co.jp/articles/f812b75b4dc247d69863b9f0a84633427ed770af