日本の今年度の最低賃金の目安が決まった。前年度から3%引き上げた全国平均848円となった。

これは2年連続過去最大の引き上げ率で、「毎年3%程度引き上げ」という安倍政権の目標に合わせる形となっている。

お隣・韓国でも2018年度の最低賃金が決まった。それも、過去最大の引き上げ幅だ。

■韓国は16.4%アップの背景

2017年現在の最低賃金は6470ウォン(約640円)だが、来年度はなんと16.4%引き上げた7530ウォン(約750円)になるという。

引き上げ率が2桁になるのは2007年の12.3%以来11年ぶりのことで、もしこのまま2桁ペースでの引き上げが続けば、2020年には日韓の最低賃金が逆転する見込みだという。

韓国の文在寅政権は「2020年の最低賃金を1万ウォン(約1000円)にする」ことを公約に掲げており、先日発表した「100大国政課題」にも賃金格差解消を強く訴えていた。

つまり、今回の急激な引き上げは公約実践に向けた第一歩というわけだ。

韓国では今回の最低賃金引き上げによって277万人の労働者がその影響を受けるという。年齢別に見ると19歳未満が63.8%で最も多く、非正規雇用の割合が多い20〜24歳と60歳以上はそれぞれ35.2%、34.4%だった。

近年、韓国の若者たちの間では「ヘル朝鮮」や「スプーン階級論」などの造語が次々と生まれその将来を憂う声が絶えなかったが、最低賃金の引き上げが、一筋の光として期待されている部分もある。

ただ、今回の政府決定について韓国内では激しい賛否両論が巻き起こっているのも事実だ。

反対派の主張は「最低賃金が上がればかえって雇用が減り、サービス質の低下、経営悪化につながる」ということ。

一方の賛成派からは「雇用主は当分辛いかもしれないが、この画期的な引き上げは経済不平等の解消、産業構造の変化、労働時間短縮に導くため避けては通れない道だ」という声が上がっている。

もっとも、それ以前の問題として韓国社会に蔓延している「賃金の未払い」が気になるところでもある。

韓国の労働運動団体であるバイト労組によると、昨年発生した賃金未払い額は1兆4000億ウォン(約1400億円)に及ぶという。

韓国より経済規模が3倍以上大きい日本よりも、10倍を超える数値だ。しかもバイト労組関係者の話によると「これは氷山の一角」らしく、最低賃金や退職金の未払い被害に遭った労働者がそれを通報しない場合も多いらしい。

先日は「国民の党」の主席副代表であるイ・オンジュ氏がこんな発言をしていた。
「私も過去にバイトをした経験があるが、給料を踏み倒されたことがある。でも店長と私は同じ船に乗っていると思い、労働庁に通報しなかった。こういう共同体意識が必要ではないか」

やりがいも苦労も分かち合おうと伝えたかったのかどうかは定かではないが、国会議員である彼女が苦労を強要しているようにも映って猛烈批判を受けているのはいうまでもない。

韓国で国会議員は「特権層だ。様々な特典は語るまでもなく、権力も享受している」と言われているだけになおさらだ、

彼女は以前、ストライキを起こした学校の非正規給食調理員に向けて「給食調理員なんて、ただの飯炊きおばちゃん」と暴言を吐いた人物だが、今度は賃金の未払いを容認するような発言でまたもや渦中の人となった。

雇われる側に理不尽な「共同体意識」を求めたり、それに従ったりする人が未だに存在する限り、賃金の未払い問題はなくならないだろう。

ましてや最低賃金が上がれば、もっと増えるかもしれない。

それにしても、原発の永久停止や公務員増員など、前例のない政策を続々と打ち出している文在寅政権。それははたして薬となるか、毒となるか。

その行方に注目したいと思う。

2017年07月30日
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