米国と北朝鮮は9日、これまでに例がない表現で対立した。米情報機関が「北朝鮮は核弾頭の小型化に成功した」との判断を下したとする米メディアの報道が発端だった。トランプ大統領はそれに関する質問を受け、「(北朝鮮は)今までに世界が見たことがない炎と怒りに直面することになる」と述べた。

 米国内からも「北朝鮮が火の海にすると脅迫するからといって、米大統領も真似をするのか」という批判が聞かれる。しかし、米政府が現在の状況をそれほど深刻にとらえていることは事実だ。

 これに対し、北朝鮮は中距離弾道ミサイル(IRBM)の火星12号でグアム島周辺に対する包囲射撃を行う準備をしていると公言した。北朝鮮が米国の具体的地点を示し、攻撃を予告したというのは異例だ。この攻防は今後米国と北朝鮮の間に起きる事態の予告編にすぎない。

 直ちに戦争が起きるとは考えられない。とはいえ、北朝鮮がレッドラインを越えてしまった今、何が起きてもおかしくないことは事実だ。数十年にわたる安保不感症に陥っている韓国社会は「まさか」と思うだろうが、韓半島(朝鮮半島)情勢は既に危険水位を越えている。

 北朝鮮が最初の核実験を実施してから11年が過ぎた。通常核弾頭の小型化には数年がかかる。北朝鮮は小型化に成功したと見るべきだ。残された課題は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を大気圏に再進入させる技術程度だ。米日は来年には北朝鮮が再進入技術も確保するとみている。災難は目前に迫っている。

 状況がこれほど深刻でも韓国政府の存在感はないに等しい。北朝鮮がICBMを発射しても、韓米首脳は米日首脳の電話会談から6日後にようやく電話会談したのが実情だ。電話会談が実現しても、トランプ大統領は文在寅(ムン・ジェイン)大統領と真剣に安全保障について話し合った印象はない。

 韓国のそばで「炎」「射撃」といった言葉が飛び交っているにもかかわらず、「コリアパッシング(韓国無視)」現象が起きている。今後米国と北朝鮮が交渉を行うにせよ、戦争になるにせよ、韓国政府が排除されたまま国民の運命が決まることだけは防がなければならない。

 当面は北朝鮮の軍事動向を綿密に観察すると同時に、韓米間で少なくとも米日レベルの協調体制を復元させるべきだ。米国の北朝鮮に対するいかなる措置も事前に通報を受け、協議できなければならない。現状ではそれを期待するのは難しいのも事実だ。

 キッシンジャー元米国務長官が北朝鮮の核廃棄の条件として、在韓米軍を撤収する米中交渉論まで提起している状況だ。米国内の動きをしっかり把握していないと、大きな災いに見舞われかねない。

 文大統領は先ごろ、「韓国には役割を果たす能力がない」と漏らした。それは事実であり現実だ。しかし、嘆いているだけでは、国が直面する状況があまりに深刻だ。大統領は国家防衛の歴史的責任を負っている。

 文大統領にはこれまで慣れ親しんだ「太陽」(対北宥和策)の論理を原点に立ち返って考え、ひたすら国益と安全保障のためにどう進むかを考えてもらいたい。国際関係などを考慮し、韓国自らがタブー視してきたあらゆる手段もテーブルに並べ、検討する必要がある。今は非常事態だ。

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