朝鮮王朝第22代国王・正祖が編さんを指示した『武芸図譜通志』を、北朝鮮が世界記録遺産に登録したことが確認された。英文の登録申請名は「Comprehensive Illustrated Manual of Martial Arts」。北朝鮮は昨年7月、『武芸図譜通志』をユネスコ(国連教育科学文化機関)のアジア・太平洋地域記録遺産に登録して先手を取り、今年は世界記録遺産にも登録した。

 『武芸図譜通志』は、1790年に奎章閣(朝鮮王朝の王室図書館)の検書官(奎章閣の実務担当者)だった実学者の李徳懋(イ・ドクム)、朴齊家(パク・チェガ)、武官の白東脩(ペク・トンス)などが主軸になって編さんした、朝鮮時代の軍用武術教本だ。歩兵の武芸18種類と馬上武芸6種類を合わせ、計24種類の武芸を取り上げた。さらに、この24種類の武芸を「刺法」(刺す)、「坎(こん)法」(斬る)、「撃法」(打つ)の三つの体系に整理した。韓中日の武器や武芸の違いを、絵で見ることができるようにしたのが特徴だ。

 研究者らは、『武芸図譜通志』を「伝統武芸の『東医宝鑑』」と表現する。韓国学中央研究院のチョン・ヘウン責任研究員は「『武芸図譜通志』は、武芸書およそ140巻を参照して韓中日の武芸を比較分析した、朝鮮時代の武芸の決定版。北朝鮮の名前で登録されたのは残念だが、書物の内容は世界的にも認められるだけの独創性を有している、とユネスコが判断したことを意味する」と語った。

 問題は、北朝鮮が登録申請書で「『武芸図譜通志』に載っている武芸は古朝鮮・高麗を経て朝鮮王朝へと至り、これが現代北朝鮮のテコンドーの原型になった」「挿絵は金弘道(キム・ホンド)が描いた」と主張していることだ。韓国の学界では受け入れ難い主張を、ユネスコが公認する形になった。文化財庁は、『武芸図譜通志』がアジア・太平洋記録遺産に登録された直後の昨年8月、北朝鮮との世界記録遺産共同登録を検討する中でこうした内容を確認していたが、共同登録は難しいと判断した後、積極的な是正措置は取らなかった。

 韓国国内では、ソウル大学奎章閣、韓国学中央研究院蔵書閣、国立中央図書館などが『武芸図譜通志』数十巻を保有している。文化財庁は「世界記録遺産は、所蔵機関が登録申請をすれば国内審査を行うが、これまで韓国国内から申請した機関はなかった」と説明した。

ヤン・ジホ記者

2017/11/01 10:52 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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