米中関係がにわかに緊張している。
ドナルド・トランプ米大統領が対中制裁関税の発動検討を発表したのに加えて、
米国務省は台湾における米国の窓口機関である「米国在台湾協会(AIT)」の警護要員として、米海兵隊に要員派遣を要請した。

 中国は猛反発している。
海兵隊による施設警護は、事実上の「大使館扱い」を意味しており、
中国が唱える「1つの中国」という主張に真っ向から対立するからだ。少人数とはいえ、軍事的色合いさえ帯びている。

 トランプ氏が、中国に厳しい姿勢を示しているのは、なぜか。

 南シナ海で着々と軍事基地建設を進め、北朝鮮の「核・ミサイル」問題でも暗躍する中国に対して、
「決して妥協はしない」というサインを送っているのではないか。

 そうだとすれば、米中関係は今後、緊張の度合いを強めざるを得ない。余波は間違いなく、朝鮮半島にも及ぶ。
東アジア情勢は一挙に不透明感が増してきた。
 
米国在台湾協会の海兵隊警護問題は昨年2月、元協会事務所長が米国で開かれたシンポジウムの席上
、あいさつの中で計画を明らかにしていた。
 
今回、国務省の要請を受けて、正式に台湾派遣が決まれば、初めてであり、
トランプ政権の「強い台湾防衛意思」を象徴するエピソードになる。 トランプ氏はかねて「親・台湾」色を鮮明にしてきた。

蔡英文総統とは大統領に当選直後、異例の電話会談をした。
今年3月には、閣僚を含む米台高官の相互訪問を可能にする台湾旅行法を成立させている。

 一方、中国には、けん制姿勢を崩していない。

 南シナ海では5月27日、パラセル(中国名・西沙)諸島周辺で、米海軍の軍艦2隻を航行させて「航行の自由」作戦を展開した。
 一連の動きは、緊張が高まっていた米朝関係の陰に隠れて見えにくくなっていたが、
トランプ政権は「世界の平和を乱している主敵は中国」と見定めていたのだ。

 米朝関係は6月12日にシンガポールで開かれた米朝首脳会談で一段落したか、に見えた。

 トランプ氏が6日後の18日、中国に対する2000億ドル(約22兆1840億円)規模の
追加制裁関税の検討を発表したのは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が会談で「非核化」を明言したのを受けて、
「正恩氏とは直接、話ができる。それなら、もう中国に遠慮する必要はない」と判断したためだ。

ところが、中国の習近平国家主席はまさに同じタイミングで、北京で正恩氏と3回目の中朝首脳会談を開いた。
「正恩氏はオレの手のひらに乗っているんだぞ」と、トランプ氏に見せつけた格好だ。

 いまや、中朝両国の連携は明白である。トランプ政権は北朝鮮と中国を同時に相手にせざるを得ない展開になっている。

 中国に対するトランプ政権の対決姿勢が本物であるとすれば、ようやく実務者協議が始まる米朝交渉の行方も予断を許さない。
台湾への海兵隊派遣問題は「嵐の予兆」なのだろうか。

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/180709/soc1807090002-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/180709/soc1807090002-n2.html