ウォン安が進む。理由は明快だ。2019年に入り貿易黒字が急減、GDPもマイナス成長を記録するなど「韓国経済の縮み」が明らかになった。そのうえ、日本・米国との関係が極度に悪化し、通貨危機に陥っても誰からも助けてもらえないと見なされたからだ。(文/鈴置高史)

■4月の下落率1位
 
ウォンは2018年6月中旬から2019年4月下旬まで、1ドル=1110?1140ウォン台でほぼ動く、ボックス相場を形成していた。しかし4月25日に1年9カ月ぶりの安値を付けた後は、1150?1160ウォン台を推移するようになった。

4月30日には前日比9・7ウォン安の1168・2ウォンまで下がり、1170ウォン台をうかがった。2017年1月20日(1169・2ウォン)以降、2年3カ月ぶりのウォン安水準である。

聯合ニュースは「ウォン、1か月で2・8%急落…重要16カ国の通貨中、下落率1位」(5月1日、韓国語版)との見出しで“異変”を伝えた。

■予想外のマイナス成長
 
4月25日に前日比9・1ウォン安の1150・9ウォンと大きく下げたのは、同日発表の2019年第1四半期のGDP(速報値)が前期比で0・3%減と落ち込んだからだ。

世界が金融危機に陥った2008年の第4四半期(3・3%減)に続くマイナス成長だ。市場予想はプラスの0・3?0・4だったから「マイナス」には驚きが広がった。ウォンが売られたのも当然だった。

ことに内容が悪かった。将来の成長を担保する投資が前期比10・8%減、前年同期比では16・1%減だった。半導体市況の低迷を受け、同製造装置への投資急減が響いた。輸出も米中経済戦争のあおりを受け前期比2・6%減。これも韓国経済の縮みを実感させた。

■10カ月連続で景気指数が下落
 
4月30日のウォン急落も、同日発表の統計「2019年3月の産業活動動向」に足を引っ張られた側面が強い。

3月の景気の動向指数(循環変動値)と先行指数(同)は、それぞれ前月比0・1ポイント下落した。2つの指数が共に10か月連続で下げるのは、1970年1月にこの統計をとり始めて初めて。

2019年の第1四半期の製造業の平均稼働率は71・9で、世界金融危機直後の2009年第1四半期以来の低い水準となった。生産、投資はそれぞれ前期比3・0%減、5・4%減だった。

5月1日にも「韓国の縮み」を示す統計が発表された。4月の通関統計(暫定値)だ。

4月の輸出額は前年同月比2・0%減の488億5700万ドル。輸出が前年割れするのは2018年12月以降、5か月連続だ。一方、輸入は同2・4%増の447億3700万ドルだった。

4月の貿易収支は41億2000万ドルの黒字となったが、前年同月比33・0%減。1?4月の貿易黒字も134億3900万ドルと、前年同期比28・5%減で、黒字減少が一時的な現象ではないことが浮き彫りになった。

2019年5月2日掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/05021700/?all=1
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/05021700/?all=1&;page=2

>>多分続きます。