【コラム】トランプ大統領に「東海」と呼ばせるためには
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韓国政府がこのほど、米メディアに「East Sea(東海)」という単語を使ってほしいと要請し、実現直前まで行ったそうだ。新聞紙面やテレビ画面で使われる地図に「Sea of Japan(日本海)」と表記していたものを「日本海/東海」に変更するという内容だった。しかし、トランプ大統領が先月、在日米軍基地で演説した時に「日本海」と公に発言したため、実現しなかったという。米メディア関係者はこの話を伝える際、「ひとまず保留されたが、完全になくなったというわけではないと聞いた」と言った。

 米国は正式にはすべての公海について1つの名称のみを使用している。米地名委員会(BGN)が東海に対して決めた表記は「日本海」だ。韓国としては受け入れられない話だが、米政府の基本方針はそうなっている。しかし、これは変更不可能な絶対原則ではない。バージニア州は新たに作った教科書で東海と「日本海」を併記している。韓国人団体が長年力を入れてきた成果だ。米マッカーサー記念館の地図は「日本海」と表記されていたが、韓国側の要請で「東海」に変わった。数年前、米国防総省内に設けられた6・25戦(朝鮮戦争)記念館を訪れた時、展示物の地図がすべて「日本海」となっているのを見て問題提起したことがある。「韓米同盟をたたえる展示物なのだから、韓国の見解に配慮してもいいのではないか」と言ったところ、案内をしてくれていた米軍将校が「一理ある。たぶん、ほかに(『東海』に変えてほしいという)要請がなかったから原則通りにしたのだろう」と答えた。たたけば門戸は開かれるかもしれないという意味に聞こえた。

 「東海表記」問題は韓日関係におけるもう1つの雷管だ。今、足元に火がついている強制徴用問題や従軍慰安婦問題に比べれば喫緊でないように見えるが、「東海/日本海」をめぐる韓日戦は予告されている。世界の海の名称について国際的な基準を決める国際水路機関(IHO)は「来年4月に行われる総会までに韓日は東海の名称について協議し、報告せよ」と述べた。世界の地図製作の指針であるIHOの「大洋と海の境界」は日本植民地時代の1929年の初版から「日本海」を単独表記し続けてきたが、90年目にして変更の可能性が出てきたということだ。韓国の国民感情としては「東海単独表記」になるべきだと考えているが、国際的な環境を考慮すると、「日本海/東海」併記でも実現すれば大きな前進だろう。

既に韓日間の非公式協議は始まっていて、各国の支持を得るための世論戦も展開されている。世界各国の出版物が「日本海/東海」と併記する割合は着実に増えており、20−30%水準に達しているという。日本は「日本海が国際的に確立されている唯一の呼称だ」という論理を刻みつけようと総力戦を繰り広げている。日本の自民党は先日、領土主権に関する研究機関を設置するという公約を掲げたが、これは「日本海」「竹島(独島の日本側呼称)」の主張を裏付ける根拠を見つけるのが目的だとのことだ。

 これまで韓国の外交は、韓日間の対立事案で先手を打った対応を取るのではなく、世論が高まった後に収拾に出るという流れを繰り返してきた。それで解決方法を見つからない時は反日感情で問題をさらに悪化させてきた。冷静な戦略と実力がなければ、来年もまったく同じ展開になるしかない。トランプ大統領が日本で「日本海」と言ったことを、韓国の外交の失敗に結びつける必要はない。日米同盟を強調する場で、米海軍の複数の作戦水域に言及する際に飛び出した発言に過ぎない。韓国は、トランプ大統領が訪韓し、在韓米軍の前で演説する時、「東海」という言葉を引き出せる外交力を持てばいい。米国の表記方針があるとは言え、細かい原則にとらわれないトランプ大統領なら、韓国のやり方次第だ。「無能」「失敗」といった汚名をかぶせられている韓国の外交が、そうした逆転ができる力を見せられるだろうか。

イム・ミンヒョク論説委員

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/06/21/2019062180160.html
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/06/22 06:02