文在寅氏、米韓不協和音をカネで抑え込み
2019/09/24 19:19

 【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅大統領がトランプ米大統領との会談で真っ先に持ち出したのは、米国産液化天然ガスの輸入拡大などカネの話だった。北朝鮮との対話が滞り、日本との対立で日米韓の安全保障協力が揺らぐ中、トランプ政権は在韓米軍の駐留経費問題で大幅な増額を突き付けている。カネでトランプ氏の歓心を買うしかない文氏の苦しい立場がにじむ。

 文氏は会談冒頭、「(次の)米朝首脳会談が実現すれば、世界史的大転換になる」と対北対話でのトランプ氏の指導力を称賛した。続けて韓国企業の対米投資の増加や液化天然ガスの追加輸入決定などを列挙し、「これら全てが韓米同盟をより強固に発展させると信じている」と強調した。

 トランプ氏は「韓国は軍事装備購入でお得意さまだ」と述べ、兵器の追加購入が会談の中心議題の一つになることを予告。韓国大統領府によると、文氏が実際に米国からの過去10年間の兵器購入実績と今後3年間の購入計画を説明した。

 これは24日からソウルで始まった在韓米軍の来年以降の駐留経費をめぐる米韓当局間の交渉で米側から法外な負担を迫られることを牽制(けんせい)するためだ。今年分は前年比8・2%増の1兆389億ウォン(約935億円)で合意したが、米側は合同軍事演習や戦略兵器の韓国展開費用も上乗せし、5倍以上の50億ドル(約5380億円)を求めていると報じられている。会談で文氏は「合理的な水準の公平な分担」を強調したという。

 会談では南北経済協力事業の開城(ケソン)工業団地や金剛山(クムガンサン)観光再開問題が取り上げられなかった。文氏が優先したい事業を封印し、トランプ氏が関心を持つ議題に絞った格好だ。その結果、日米韓の安保協力を揺るがし、米側から不満が噴出していたGSOMIA破棄決定への言及もなく、「韓米同盟は今後も揺るがない」との言質を取り付けた。

 米韓の不協和音を静めるのにはひとまず奏功したといえそうだ。ただ、米軍駐留経費問題は、将来の日本や北大西洋条約機構(NATO)加盟国との交渉にもかかわるだけに、米側の大幅譲歩は想定しにくい。
https://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/sankei-wor1909240036.html