しかし、筆者は3つの理由で、米国が勝つと見ている。

 第1の理由は、中国経済が悪化し続けるのは、必然であること。

 中国は08〜11年、「100年に1度の大不況」に負けず、高成長を続けていた。IMFによると、この国のGDP成長率は、2008年9.6%、2009年9.2%、2010年10.61%、2011年9.5%。

 ところがその後を見ると、2012年7.9%、2013年7.8%、2014年7.3%、2015年6.9%、2016年6.72%、2017年6.86%、2018年6.57%、2019年6.14%で、着実に鈍化している。

中国経済が、低成長時代に向かっていることは明らかだ。

 中国は、近い将来「一人っ子政策」(1979〜2015年)の影響で、日本をはるかに上回る人口減少時代に突入する。

 それが、経済成長をさらに困難にする。

 中国政府はこれまで、「共産党の一党独裁だから、世界一の経済成長を実現した」と主張できた。しかし、低成長時代が到来する20年代、一党独裁の正当性を証明するのは容易ではない。

 第2の理由は、中国の政体が脆弱であること。

 既述のように、米国が深刻な問題を抱えていることは間違いない。しかし、米国の政体は、滅びない。

 「米中覇権戦争」といっても、人民解放軍がワシントンを占拠するとか、米軍が北京を占領するといった事態は、想像しにくい。

 だから、米国が崩壊するといった事態は、想定できない。

 トランプ政権が倒れても、選挙が実施され、新たな大統領が誕生するだけだ。これが民主主義政体の安定性であり、強さだ。

 一方、中国は共産党の一党独裁だ。

 ソ連がそうだったように、共産党の一党独裁体制が崩壊すれば、政体、国体自体が変わる。つまり、中国が「敗戦する状況」は、容易にイメージできる。

 第3の理由は、「戦闘なしの戦争」で、中国は勝てないこと。

 既述のように、核大国同士の「戦争」は、「戦闘」に発展しにくい。そして、情報戦、外交戦、経済戦、代理戦争などがメインになる。

 情報戦で中国がアメリカに勝つのは難しいだろう。理由は単純で、中国が実際に「悪いこと」をしているからだ。

 例えば、「ウイグル人100万人を強制収容している」ことで、中国共産党は「ナチス」、習近平は「ヒトラー」と比較される。

 今まで欧米と日本は、中国の人権侵害には目をつぶってきた。理由は、「チャイナ・マネー」が欲しかったからだろう。しかし、中国経済は、必然的に鈍化していく。

 今まで中国は、「金がたっぷりある人権侵害国家」だったが、これからは「金がない人権侵害国家」に変わっていく。

 「金がたっぷりある人権侵害国家」であれば、しぶしぶながらも、つきあいたい国や企業は、たくさんいる。しかし、「金がない人権侵害国家」は、「ただの人権侵害国家」にすぎない。わざわざつきあう国や企業はいないだろう。

 日本を含め、世界の国々は今、「米中どちらに付くべきだろうか?」と自問している。だが、時がたつにつれ、中国に付く国は減り、米国に付く国が増えていくのは明らかだろう。

● 日本は、 第2次大戦時の過ちを繰り返すな

 1939年、第2次大戦が勃発した。

 この時、日本は、ナチスドイツの同盟国ではなかった。しかし、その1年後の1940年9月、日本はドイツの正式な軍事同盟国になった。

 当時ドイツは、大国フランスをわずか1カ月で降伏させ(40年6月)、破竹の勢いだった。

 それで日本は「ドイツが勝つ」と情勢判断を間違え、「ユダヤ人絶滅」を企むような国の同盟国になってしまったのだ。そして、必然的に敗北した。

 今の日本はどうだろう?

 中国は、新型コロナウイルス感染症の震源地だったにもかかわらず、いち早くコロナ禍を克服したといわれる。そして、第2四半期のGDP成長率は、3.2%だったと報じられている。

 同時期、米国がマイナス32.9%であるのを見て、「中国が勝ち、米国が負ける」と勘違いする人もいることだろう。

 だが、状況は、総合的、長期的に見る必要がある。

 日本は、ナチスドイツ側について敗北した歴史的失敗を繰り返してはならない。“現代のナチスドイツ“ともいえる独裁的で排他的な中国ではなく、“当時の英国”のような立場の米国に付いてこそ、日本は“戦勝国”になれる。

北野幸伯


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