筆者はかれこれ10年近く中国で生活していますが、海外で生活していると、日本に住んでいたらまず気が付かなかったであろう日本の意外な特徴に気づくことがあります。つい最近も、「日本って実は調味料が異常に豊富な国なのではないか?」という新たな事実に気が付きました。

 少なくとも中国と比較した限りでは、日本で市販されている調味料の種類はきわめて数が多くバラエティに富んでいます。

 特に、料理にかけて使うソースやドレッシングといったテーブル調味料においては、ひょっとしたら世界屈指の水準にあるのではないかと思われるほどです。

 そこで今回は、家庭で使われる日本の調味料がいかに豊富であるかについて、中国人の意見も交えながら見ていきたいと思います。


生野菜を食べない中国人

 その事実に気が付いたのは、筆者が上海市内のスーパーで何気なくサラダドレッシングの陳列棚を見ていた時です。商品のほぼすべてが外国メーカー製で、中国メーカー製のドレッシングがないのです。

 それもそのはずと言うべきか、そもそも中国では生野菜を食べる習慣がありません。生野菜サラダを食べ始めたのはほんの最近で、それも沿岸部の大都市における一部の中国人だけです。

 つまり需要がないので、サラダドレッシング分野に参入する中国の食品メーカーは存在しなかったというわけです。同じくマヨネーズも外国メーカー製品が主流となっています。


中国では黒酢が最もポピュラー

 サラダ用調味料に中国製品が少ないことに気が付いた筆者は、それなら他の調味料はどうだろうかと改めていくつかのスーパーを回ってみました。

 すると、日本のスーパーでは数多くの種類が売られているケチャップやマヨネーズが、ほんの数種類しか置いてありません。ウスターソースやパスタソースなどは全く置いていない店も珍しくありませんでした。もちろん日本人向けに日本食を取り扱うスーパーでは、これらの調味料は取り揃えられています。けれどもまだ中国では一般的な調味料としては扱われていないようです。

 では、中国の家庭では普段どのような調味料を使っているのか。知り合いの中国人に話を聞いたところ、黒酢が最もポピュラーだとのことでした。

 日本における調味料の王様といえば言わずと知れた醤油です。中国でも醤油は幅広く使われており、スーパーでも多くの種類の商品が並べられています(醤油は東アジアで広く使われている調味料で、その起源についてはさまざまな説があります)。ただ中国では、醤油の代わりに黒酢を用いる家庭が少なくありません。実際に、餃子や小籠包は黒酢につけて食べるのが普通です。筆者の感覚でも、中国では醤油より黒酢を使うことが多いようです。食卓に並ぶ調味料としては、黒酢がいちばんポピュラーなのではないでしょうか。

 このほか中国の食卓に置かれる調味料としては、日本でもおなじみの辣油(ラー油)が代表的です。しかし黒酢と辣油を除くと、出来上がった料理に使うテーブル調味料は、中国にはほとんどありません。


本家を追い越す日本のマヨネーズ

 ただし料理を作る際には、台所でさまざまな調味料が使われます。豆板醤やXO醤など中国独自の調味料も少なくありません。日本と比べて少ないのは、先ほどから述べている通り、出された料理に直接かけて使うテーブル調味料です。

 逆に日本は、テーブル調味料が異常に発達した国であるように思えます。

 醤油ひとつ取っても甘口、薄口、濃口のみならず、刺身用から卵かけごはん用までと用途が細かく設定され、ラインナップが果てしなく広がっています。

(続く)

2020.8.17(月)花園 祐
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61683?page=3

中国・上海の日系スーパーで行われていたキユーピーの特設販売(筆者撮影)
https://i.imgur.com/ktOS8yL.jpg

キューピーの「からしマヨネーズ」
https://i.imgur.com/gEbzSCB.jpg