菅政権に早急に取り組んでもらいたい重要案件の1つが、「外国資本による土地売買規制」だ。

 北海道の水資源や九州の自衛隊基地周辺が、外国資本に買い漁られているのだ。人口減少による過疎化が主な原因だ。

 問題の核心は、その主体が欧米など同盟国の投資家によるものではなく、アジア系、とりわけ中国資本によるものとみられるからだ。

 日本では、森林ですら地籍調査は4割止まりというのが実態で、残り6割の所有者がどうなっているのか、把握しきれていない。森林どころか、都市部の住宅地は実地調査によるまとまった統計はなく、実態をつかみ切れていないのが現状である。

 日本には大正14(1925)年に制定した外国人土地法がある。国防上必要な地区で政令により取得を禁止・制限できるのだが、政令を定めていないのだから、仏像造って魂入れずだ。明治憲法下で軍事活動を前提とした規定だからというのが主な理由という。

 明治6(1873)年の地租改正以来、土地などの財産に関する私権が強い伝統があるが、それにしても政府の対応はだらしない。日本だってバブル最盛期、米ニューヨークにあるマンハッタンの一等地を買ったり、オーストラリアの土地を買い漁ったりした。

 だが、米国やオーストラリアの軍施設周辺や原子力発電所といった国防上の懸念がある土地の売買を試みて阻止されたとは聞いたことがない。確かに、世界貿易機関(WTO)は、国籍による土地売買の差別をしないという協定があるが、例外もある。

 国防上の安全を理由にした土地の取得制限は認められているにもかかわらず、日本は態度をあいまいにしているのだ。

 英国も、日本と同様に外資のみを対象とした規制はないが、公的機関には土地収用権があり、国防上、危険と判断した場合はすぐに強制収容が可能となっている。日本ほど、外資による土地規制がない国は珍しい。

 行政が保有する情報としては、森林法や国土利用計画法、不動産登記法に基づく届け出情報がある。だが、すべてを把握するには限界があり、法の不備が放置されているのが実態である。

 防衛省は平成25(2013)年、自衛隊周辺施設の土地取得に関する抽出調査を実施し、北海道や長崎県で外資による土地取引があったことを確認した。

 北海道の場合、政府専用機を運用し、駐機場となっている航空自衛隊の千歳基地周辺、長崎県の場合、対馬市中部にある海上自衛隊対馬防備隊周辺のことだ。韓国ホテルが取り囲むように宿泊施設を建設している。

 取材に訪れた際、監視員風の韓国人職員につまみ出されそうになった様子は、拙著『静かなる日本侵略』(ハート出版)に詳しい。

 同22(10)年以降、北海道では外資が森林を買収していたことが発覚した。砂川市では292ヘクタール、東京ドーム60個分の広大な森林が買収されていた。

 私は今年1月の連載「日本復喝!」で、「北海道の洞爺湖から東の苫小牧に連なる一帯は、中国が『一帯一路』の一環として建設に動き出している、北極海経由の航路『氷上シルクロード』の中継拠点としてうってつけなのだ」「昨年は中国の王岐山国家副主席が、一昨年は李克強首相が来日時にわざわざ北海道を訪れ、洞爺湖周辺を訪問している」と指摘した。

 外資による土地買収については、個人や地方自治体など、売る側にも経済的な事情があるのは当然だ。

 ただ、それを野放図に許せば、国土が外資によって虫食いにされ、気づけば、自宅の近所に異質な共同体ができていた−ということになりかねないのである。

 法の整備が急がれる所以(ゆえん)である。

佐々木類(ささき・るい)
ZAKZAK 2020.9.19
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200919/dom2009190002-n1.html