【北京・坂本信博】韓国のドラマや映画、K−POPなど韓流文化の流入を制限する「限韓令」が続いてきたとされる中国で今月初旬から、2015年以来6年ぶりに韓国映画が劇場公開されている。中国の会員制交流サイト(SNS)では複数の韓国人タレントの公式アカウントも解禁。来年2月の北京冬季五輪への「外交ボイコット」を米英両国などが表明する中、韓国政府が開催を支持する姿勢を見せていることへの見返りとの見方もある。

 中国政府は、16年に韓国が米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に合意して以降、韓国の製品や娯楽作品を中国市場から排除する事実上の経済制裁を発動。人口約14億人の巨大市場で多くのファンを持っていたK−POPなど韓国発の芸能コンテンツが一斉に締め出された。

 しかし、今月3日から韓国映画「オ!ムニ」が中国で封切りされた。韓国で20年9月に公開されたコメディーで、一人娘をひき逃げされた男性が、唯一の目撃者である認知症の母親と一緒に犯人を捜す物語。短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」では、「韓国映画6年ぶりに中国上映」というハッシュタグ(検索目印)が付いた投稿の閲覧回数が1億6千万回を超えている。

 6年ぶりの韓国映画公開について、米政府系の自由アジア放送(RFA)は、韓国政府が北京冬季五輪を支持する姿勢を見せていることへの見返りとの見方を報道。台湾メディアは、来年8月の中国と韓国の国交樹立30周年を記念する「中韓文化交流年」の一環で、限韓令の解除が始まったのではないかと伝えた。

 微博では11月ごろからK−POPの男性アイドルグループ「SUPER JUNIOR(スーパージュニア)」など複数の韓国芸能人のアカウントも復活している。

 一方、今月中旬に予定されていた米ハリウッド映画「スパイダーマン」シリーズ最新作の中国での公開は取り消しとなった。原因は明らかにされていないが、米中対立の深まりが影響したのではとみられている。

韓国「終戦宣言」支持に呼応? 「外交ボイコット検討せず」

 【ソウル池田郷、北京・坂本信博】韓国大統領府の高官は8日、北京冬季五輪について「わが政府は現在、(外交)ボイコットを検討していない」と述べ、外交ボイコットを表明した同盟国の米国との温度差を印象付けた。中国外交担当トップの楊潔〓共産党政治局員が2日、文在寅(ムンジェイン)政権が呼びかける朝鮮戦争の「終戦宣言」に支持を表明したのに呼応した反応との受け止め方もあり、国内外に波紋を広げている。

 文大統領は米国と北朝鮮、中国に働きかけて終戦宣言の締結に道筋を付け、政権の功績にするのが悲願。中国側にすれば韓国側の意向に賛意を示すことで、来年5月に任期満了が迫る中で功を急ぐ文政権の足元を見つつ、北京五輪を巡って対立を強める米国をけん制する効果が期待できる。

 一方、米国には共和党を中心に「北朝鮮の非核化の進展や基本的な人権保障もないまま、終戦宣言などを推進するのは危険だ」との主張が根強い。バイデン政権も終戦宣言の賛否について態度を保留する中で「実現は困難」(外交筋)との見方が支配的。中国はこうした状況も踏まえた上で、米韓の同盟関係にくさびを打ち込む狙いがあるとみられる。

 中国外務省の汪文斌副報道局長は13日の記者会見で、韓国が外交ボイコットに否定的なことを「五輪の精神に合致し、中韓両国の友好的な関係の表れでもある」と評価した上で、「韓国側と共に努力して朝鮮半島問題の政治解決を推進し、半島の長期的安定と安全の実現に積極的に貢献していきたい」と述べた。

※〓は「竹かんむり」に「后」の「一口」部分が「虎」

12/15(水) 10:51配信 記事元 西日本新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/263630cd5f50d54628231bf3bdc99c08ef7c3538
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