中国政府が、中国の電気自動車(EV)メーカーに対し半導体などの電子部品について、
中国企業の国産品を使うように内部で指示していることがわかった。
世界的に急成長するEVの分野でサプライチェーン(供給網)を国内で完結させる狙いとみられ、
今後、日米欧の部品メーカーは排除される可能性が高い。
中国政府は自ら掲げる「高水準の開放」とは逆行し、成長分野での外資排除の動きを強めている。

https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/09/20230916-OYT1I50142-1.jpg
ドイツのミュンヘンで開かれたモーターショーで展示された中国のEV大手・BYDの新型EV(8日)=AP

 複数の関係者によると、中国政府で産業政策を担う工業情報化省の閣僚経験者が昨年11月、
中国の自動車関連メーカーを集めた内部の会合で、「中国企業の国産品の部品を使う」ように口頭で指示を出した。
国産部品の使用率に関する数値目標を立てることも求めたとされる。
EVに使う半導体などが対象で、数値目標を達成できない場合には、メーカーに罰則が科される可能性があるという。

 今月1日には、工業情報化省や財政省などが「自動車産業の着実な発展に関する作業計画(2023〜24年)」を公表し、
「自動車産業の供給網の安定と円滑性を確保する」としたうえ、供給網の安全を監督する枠組みを設立する方針を明らかにした。
電子部品の国産品使用率の検査や車載用電池の認証制度の導入を実施していくとみられる。

 在中国の外交筋は「閣僚経験者の口頭指示は外資排除の証拠を残さないようにするためだ。
作業計画で供給網の 強靱きょうじん 化を明確にすることで、各メーカーに国産部品の利用徹底を図ろうとしている」と分析している。

 中国の調査研究機関によると、中国の自動車部品の22年の市場規模は3兆8800億元(約78兆円)で、
28年には4兆8000億元(約96兆円)になると予想されている。
これまでは日米欧の部品メーカーが中国市場の大部分を占めていたが、中国企業は外資企業と合弁を組んで技術を吸収し、
自動車部品の製造技術を大幅に向上させたとされる。
ガソリン車からEVに急速に移行していく過程で、EV製造の中核となる電子部品で外資に依存せず、
自前で調達する態勢作りを進めており、駆動装置以外はすべて技術を入手したという。

 関係者は「中国企業がEVの部品製造で過当競争を仕掛ければ、日米欧のメーカーが国際競争力を失っていく。
燃料電池車(FCV)などでも中国の製品が世界市場を席巻することになる」と警鐘を鳴らしている。

2023/09/17 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230916-OYT1T50273/