テープに正弦波信号を記録し再生テープスピードを変えて周波数を変えると、周波数が上がるほど(再生テープスピードを上げるほど)再生ヘッド出力は大きくなる(あまりにも周波数が高くなると損失の影響により減少するが)。
これはテープ上の磁束が同じなら周波数が高くなるほど再生ヘッド出力が大きくなることを示しており、なので再生イコライザで基本-6dB/oct.で高域を減衰させる。
しかしテープスピードを変えるのではなく一定スピードのテープに記録する場合は、周波数が高くなるとテープ上の波長が短くなり磁力が打ち消し合い、同じ磁束で記録することができなくなる。
また高域ではいろいろな損失が増えてくるので、本当に-6dB/oct.で高域を減衰させると高域の飽和レベルが大きく低下してしまう。
さらに-6dB/oct.では低域側でゲインがどこまでも上昇することになり、再生アンプの低域雑音がひどく大きくなってしまう。
そこで-6dB/oct.とするのは一定の周波数範囲だけにとどめ、それより低い周波数も高い周波数もフラットとする。
これが再生イコライザの時定数で、低域側は3180μs (50Hz)、高域側はType Iテープは120μs (1326Hz)、それ以外のテープは70μs(2274Hz)と規定されている。
コンパクトカセットの基準周波数がオーディオでよく使われる1kHzではなく315Hzなどとなっているのは、上記の時定数の中間(-6dB/oct.の範囲の中央)程度に選ばれているためである。
なので基準周波数を録音したテープは再生スピードがずれても再生イコライザ出力電圧はあまり変化せず、また315Hzでも400Hzでも磁束の大きさが同じなら出力電圧もほぼ同じになる。
なお315という値はISOのR10標準数(10の10乗根を元にした数列1.0, 1.25, 1.6, 2.0, 2.5, 3.15, 4.0, 5.0, 6.3, 8.0, 10, ...でほぼ等比)の一つであり、300とか350とかでなく315である理由は、300や350より315の方が「キリのいい」数とみなされているからである。