0372名無しの笛の踊り
2019/06/22(土) 11:16:30.58ID:f0taPy9jレイコさんは本を読みながらFM放送でブラームスの二番の
ピアノ協奏曲を聴いていた。
見わたす限り人影のない草原の隅っこでブラームスが
かかっているというのもなかなか素敵なものだった。
三楽章のチェロの出だしのメロディーを彼女は口笛でなぞっていた。
「バックハウスとベーム」とレイコさんは言った。「昔はこのレコードを
すりきれるくらい聴いたわ。本当にすりきれちゃったのよ。
隅から隅まで聴いたの。なめつくすようにね」
『ノルウェイの森』村上春樹