正しく解釈するには、「ただし書」に主語「本軍律」を補足して考える必要がある。

<但し(本軍律は)中華民国軍隊又は之に準ず軍部隊に属する者に対しては陸戦の法規及慣例
に干する条約の規定を準用す>

こうすれば、ハーグ陸戦法規に違反した中国兵を中支那方面軍軍律に規定した軍罰で処罰する
ことができる。 「準用規定」を用いることで、可能になる。

秦郁彦氏の見解では、南京事件で軍律会議は準備していたが開かずに処刑した、としている。
これは、「中国兵はハーグ陸戦法規を準用する」という解釈と、歴史学者である秦郁彦氏の見解と
では、整合性がとれない。

(歴史学者の見解)
『昭和史の論点』 文藝春秋 秦郁彦 
(関連部分を抜粋)
秦 南京事件の場合、日本軍にもちゃんと法務官がいたのに、裁判をやらないで、捕虜を大量
処刑したのがいけないんです。捕虜のなかに便衣隊、つまり平服のゲリラがいたといいますが、
どれが便衣隊かという判定をきちんとやっていません。これが日本側の最大のウイークポイント
なんです。
秦 捕虜の資格があるかないかはこの際関係ありません。その人間が、銃殺に値するかどうかを
調べもせず、面倒臭いから区別せずにやってしまったのが問題なんです。
 私が不思議でしょうがないのは、なぜ収容所に入れ、形ばかりでも取り調べをして軍律会議に
かけてから処分にしなかったのかということです。後にBC級戦犯が裁かれたときも、軍律会議に
かけていれば、戦犯は死刑になりませんでした。
秦 ですから南京でも、形式的にせよ軍律会議を開けば問題はなかったはずです。