サイモン・ファンが聞けば一発で分かるドラム・フレーズを一貫して叩き続けることです。どんなジャンルであってもツーバスの巨大セットを使い、ミュートをせずに自身の手足だけで音量をすべての音量と音色をコントロールします。
ミュートしていないのに音色はとにかくシャープです。そして、特徴的なフィルインがいくつもあります。
曲の展開前、6連符でツーバスを「ドドッ」っと叩いた後のスネアのフラム打ち、「詰め込みすぎ!」と言いたくなるようなタム回し、胴長のタムであるオクトバン(別名キャノンタム)を使ったパーカッション・フレーズなどが代表的です。
そしてお約束は、曲のクライマックスにおいて、ツーバスで16分音符や6連符を刻む足癖。これを聞くとサイモン・ファンは誰もが狂喜するのです。
ギタリスト、マイケル・シェンカーは『神(帰ってきたフライング・アロウ)』(1980年)でソロ・デビューを果たしました。マイケル・シェンカー・グループ(以下、MSG)名義だったものの当時はバンドがなく、セッション・ドラマーとしてサイモンを起用しました。
インストゥルメンタルの「イントゥ・ジ・アリーナ」は、マイケルのギターが名演すぎますが、同じぐらいに名演なのがサイモンのドラム。曲のアタマはツーバスを叩いた後のスネア・フラム、言葉にすると「ドドパン」。中盤部にあるベース・ソロでは、盛り上がり時のお約束、ツーバス連打大会になります。プロデュースの関係で、音色と音量が比較的控えめなのが惜しいところです。
MSGデビューとともに、MSGに加入した初代ドラマーはコージー・パウエル。言うまでもなく、ジェフ・ベック・グループの後にレインボーに加入したカリスマ的ドラマーです。
そんな彼が「イントゥ・ジ・アリーナ」を叩くと、サイモンとは対極的で、うるさくて重いのです。イントロは「ドドパン」ではなく「ドパン」になっていたり、ベース・ソロでは同じくツーバス連打大会ですが、引きずるような後ノリとなっていたりします。
他のメンバーたちも違うので単純比較は困難ですが、ドラマーの違いが曲に与える影響は明白です。