>>10
私が、社会的倫理規範と述べるときに念頭においているのは、根本規範としてのそれです。
従って、憲法より上位の法規範です。

もっとも、司法的適用は法律により正統化され、法律は憲法によって正統化され、
憲法は根本規範によって正統化されるという、いわゆる法段階説を提唱したケルゼンは、
根本規範がなぜ正統化・正当化されるのか、という点にはなんら答えていません。
私は、この点について、根本規範が、そしてその下位規範たる憲法や法令が
現に「実効」していることそれ自体に正当化根拠が求められるのだと考えています。
そして、「実効」するためには国家が暴力を独占しているだけでは足りず、
社会の構成員がこれをほぼ全員の共通了解としてこれを受け入れている必要がある
と考えています。

その意味での、社会的倫理規範です。
したがって、わいせつの議論における平均的一般人の「社会通念」とは、別のものです。

そしてなぜ、いま根本規範なるものを問題にしたかと言うと、法令の欠缺があるときには
上位規範たる憲法を参照して欠缺補充を行うように、憲法規範の欠缺があるときには
上位規範たる根本規範を参照しなければならないと考えたからです。


しかし、仮に理論的にそうだとしても、ではどうやっての社会的倫理規範を捕捉して認識
するのか、という問題があるというのはご指摘のとおりです。しかし、それをやらざるを
得ないのだと考えています。