【ワシントン=黒瀬悦成】オバマ前米政権下で今年1月まで国務省の北朝鮮人権問題担当特使を務めたロバート・キング氏(75)が産経新聞のインタビューに応じた。

 キング氏は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイル発射を強行した北朝鮮は「核・弾道ミサイルの能力を確立するまで、(米国などとの)対話に応じる意思はないだろう」と指摘し、国際社会が経済制裁や人権分野で北朝鮮を一層締め付けることが重要だと強調した。

 また経済制裁のカギを握る中国については「中国国内では外交政策担当者らの間で北朝鮮に対する不安が高まっており、北朝鮮の核保有に関する危険性も理解している」と分析し、中国がさらなる対北圧力強化に動く余地はあるとした。

 一方、北朝鮮の金正恩体制が拘束している3人の米国人について、解放すれば米朝の対話再開に向け「前向きの効果をもたらす」と予測。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)も5日、トランプ政権が3人の解放を条件に北朝鮮との対話に応じるかの是非を検討中と報じており、今後、3人の処遇が米朝の駆け引きの焦点になる可能性が出てきた。

 6月に北朝鮮から約1年5カ月ぶりに昏睡状態で解放され、帰国後に死亡した米国人大学生、オットー・ワームビア氏が北朝鮮当局に拘束された理由について、同氏が金正日総書記によるスローガンが書かれたポスターを、壁から取り外して持ち帰ろうとした末に床に置いたまま立ち去ったのが原因であると明らかにした。

 キング氏は「北朝鮮では最高指導者の名前が書かれた物を床に置くのは重大な違法行為だ」とした上で、「北朝鮮の法律は異質で、気を付けないと米国人には異様と思える理由で逮捕される」と警告した。

 ワームビア氏の父親がオバマ前政権の解放に向けた取り組みが不十分だったと不満を表明したことに対しては、「オバマ政権はさまざまな機会を使って解放を働きかけたが、ほとんどの場合、北朝鮮から無視された」と強調し、北朝鮮が誠意ある態度で応じなかったのが問題を長期化させた原因との見方を示した。

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 ロバート・キング氏 米ワイオミング州出身。2009年11月〜17年1月に米国務省の北朝鮮人権問題担当特使を務めた。在任中の11年に訪朝し、北朝鮮に前年11月から拘束されていた韓国系米国人宣教師の解放を実現させた。

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産経新聞のインタビューに応じるロバート・キング前国務省北朝鮮人権問題担当特使(7月5日)