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中国の主な自動車メーカー

さらに最近では、政府からの支援をまったく受けることができなかった完全民営の民族系メーカーも高度なノウハウを蓄積するようになり、急激にシェアを伸ばしている。

長城汽車、吉利汽車、BYDといった完全民営の民族系メーカーは、安い価格と利用者のニーズを捉えた製品ラインナップで急激に躍進する企業の代表格だ。

2016年に販売された2800万台のうち、民族系メーカー(政府系含む)は1000万台を突破しており、すでに40%以上のシェアがある。トヨタなどの外資系は相対的に不利となっており、以前より販売台数を伸ばすのが難しくなっているのだ。

EV時代には独立の民族系メーカーが有利に

現在、中国市場でもっとも高いシェアとなっているのは独フォルクルワーゲンで、2016年は約390万台を販売している(上海汽車との合弁会社と第一汽車との合弁会社を合わせた数字)。GMは188万台を、日産は135万台を販売しており、まだまだ外資系の勢いは強い。

だが、長安汽車が115万台、長城汽車が100万台、吉利汽車が80万台を販売するなど、民族系メーカーは着実に力を付けてきている。民族系メーカーの多くは2ケタ成長となっており、外資系メーカーは販売を伸ばすことが難しくなってきた。

こうした状況をさらに後押ししそうなのが、中国政府のEVシフトである。EVが主流になると、自動車の製造に必要な技術的な難易度が大きく低下する。自動車が価格勝負の市場にシフトする可能性が高まり、民族系メーカーにとっては有利な展開となる。

さらに民族系企業のBYDなどは、EVとプラグインハブリッド(PHV)を合わせた市場で、世界ナンバーワンのシェアを持つなど、もともとEVを得意としている。BYDは米国の著名投資家であるウォーレンバフェット氏が中国で唯一、投資を決断した企業であり、技術力の高さについてはすでにお墨付きだ。

日本の自動車部品メーカーも他人ごとではない

トヨタの2016年における中国の販売台数は約120万台と、日産やホンダの後塵を拝している。日本メーカーの中では、日産がもっともEVに力を入れているが、同社は中国市場を見据え2018年までに低価格EVを投入する見通しを明らかにしている。

この製品は、ルノーと三菱自動車との間で部材を共通化したもので、その分、コストが大幅に安くなっている。価格は日本円で80万円程度ともいわれており、実際にこの価格で提供することができれば、中国市場でも一定の競争力を確保することができるだろう。

ホンダも2018年までに中国市場専用のEVモデルを投入する計画を明らかにしている。トヨタは2020年から1年前倒ししたものの、他社よりかなり出遅れていることは否めない。価格面などで思い切った戦略を打ち出さないと、厳しい展開を迫られることになるだろう。

中国市場のEVシフトは、各メーカーのシェア争いだけでなく、日本の自動車産業全般にも大きな影響を与える可能性がある。

ホンダは中国市場に投入するEVについて、基幹部品であるバッテリーとモーターについて中国で現地調達する方針を固めたといわれる。トヨタが具体的にどのような調達を行うのかは分からないが、EVが主力製品ということになると、部品のかなりの割合が中国での現地調達になる可能性が高い。

トヨタにその傾向が顕著なのだが、日本の自動車メーカーは、内燃機関を得意する優秀な部品メーカーをグループ内に積極的に抱え込んできた。これまでは、こうしたグループ戦略が各社の強みとなっていたが、市場がEVにシフトしてしまうと、こうした強みも逆に弱みになりかねない。

日産は傘下の部品メーカーであるカルソニックカンセイをファンドに売却しており、すでに身軽な体制となっている。垂直統合モデルを維持するトヨタのグループ戦略が今後、問われることになるだろう。

(おわり)