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地球外生命体を探索すべく建設された中国の世界最大の電波望遠鏡「FAST」(Five-hundred-meter Aperture Spherical radio Telescope:500メートル開口球面電波望遠鏡)が完成して、稼働開始の段階に入っています。

中国は実際にその設備を統括する人材を世界中から募ったのですが、高給が示されているにもかかわらず募集に応じる人は「ゼロ」の状態が続いているそうです。

中国の国家発展改革委員会が予算を負担し、中国科学院に属する国家天文台によって運営されているFASTは、開口部の直径が500メートルにもおよぶ世界最大の反射型電波望遠鏡です。

FASTが完成するまでは世界最大だったのは、プエルトリコでアメリカが運営するアレシボ天文台の直径305メートルでしたが、FASTの登場によってその座を譲っています。

FASTは中国南西部に位置する貴州省に建設されたもので、2016年9月25日に稼働を開始し、中国国内の研究者が中心となって観測を行っています。

世界で最も大きなパラボラアンテナを使ってパルサーやブラックホールなどの天体から届く電波を受信し、さらには地球外生命体からの電波を受信することすらも期待されるこの電波望遠鏡に対して、中国政府は国の発展のシンボルと位置づけており、12億元(約182億円)の予算を投じて建設を進めてきました。

この建設に際し、人間が発する電波や光の影響を排除して良好な観測環境を作るために、周囲の半径5kmに住む住民1万人を移住させる方針が発表されています。

まさに国家の威信をかけて建設されたFASTで、中国は年収120万ドル(約1億3000万円)という高給を用意して施設を統括する天文学者を募集しています。しかし、現在のところそのポジションに応募してきた人は「ゼロ」という状況が続いているようです。

その理由の一つが、掲げられている条件が厳しすぎるという点がある模様。

応募者には、天文学の分野で20年以上の経験を持ち、巨大電波望遠鏡をつかったプロジェクトを率いたことがあり、経営に関する広範囲な経験を持つことが求められているほか、世界レベルの研究機関または大学で、教授もしくはそれに準ずる職にあるという条件も付けられています。

テキサスA&M大学の教授で、宇宙の謎の一つである「ダークエネルギー」の存在を発見したニコラス・サンツェフ氏は、「最終的には中国は人材を見つけるでしょう」としながらも、

「アメリカの天文学者は国の外で働きたがりません。チリの天文台で働く人を見つけるときにも私は苦労しましたが、チリの素晴らしい人々のことを考えると、なぜ行きたがらないのかわかりません」と、アメリカの研究者が海外で研究を行うことに二の足を踏んでいる現状を語っています。

欧米の天文学者の間では、FASTが掲げる科学的な目的について懐疑的な見方も広がっているとのこと。

アメリカ国立科学財団が発表した論評の中では、すでにアレシボ天文台の優先度が最底辺に置かれており、今後は予算が削減されて別の新たな分野に振り分けられるとみられています。

今回、中国が稼働を開始したFASTはいわば「さらに大きなアレシボ天文台」であるため、はたして現代の科学において有用なデータがどれほど取れるのか、疑問を呈する見方が広がっているというわけです。

また、FASTは直径500メートルという大きさをほこる電波望遠鏡ですが、機材的な制限によってその実効的なサイズは直径400メートル分ほどと見られており、直径305メートルのアレシボ天文台との差は数値ほど大きくないという声も。

http://gigazine.net/news/20170820-china-largest-telescope-no-one-to-run-it/

>>2以降に続く)

http://i.gzn.jp/img/2016/09/26/fast-largest-radio-telescope/00_m.jpg
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