防衛費要求最大 聖域にせぬ議論必要だ 北海道新聞

来年度予算の概算要求で防衛費は、本年度当初比2・5%増の5兆2551億円と過去最大となった。防衛費は第2次安倍内閣発足以降、5年連続で増加している。

来年度も、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対処するミサイル防衛(MD)の強化を重視し、高額の装備要求がめじろ押しだ。

だが弾道ミサイルの完全な迎撃は難しく、対応には限界がある。脅威を理由に目いっぱいの要求を続けているのは問題だ。このまま防衛費を聖域としてはならない。

新装備の必要性や効果の検証に加え、専守防衛政策の下で適正な防衛力の水準はどこにあるのか。国会で徹底的に議論すべきだ。

MD強化は地上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」の導入を柱とする。概算段階では金額を示さない「事項要求」にしたが、1基800億円で日本全土のカバーには2基必要だという。

イージス艦搭載の改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」も取得費472億円を計上した。

見積もりより費用が2割強増加し導入中止を検討した無人偵察機「グローバルホーク」も、結局取得費144億円を盛り込んだ。

見逃せないのは、装備の調達先の大半を占める米国の存在だ。

先月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表に、2019年度以降の次期中期防衛力整備計画を見据えた「日米同盟における日本の役割の拡大と防衛能力の強化」が明記された。

日米の軍事的一体化を装備・予算面からも担保し、米国からの装備品調達を後押しする狙いが隠されているとの指摘もある。

トランプ大統領の「バイ・アメリカン」に沿うもので、安倍晋三首相も米国からの装備調達は「結果として米国の経済や雇用にも貢献する」と述べている。

日本の防衛力が米国の意向や事情を勘案しながら整備されているとしたら、筋違いも甚だしい。

野党からは、政府が地上イージス導入を国内より先に米側に伝えたことに反発も出ている。臨時国会で徹底追及すべきだ。

一方、日本国内で軍事技術に応用できる研究に助成する安全保障技術研究推進制度に、本年度と同額の110億円を要求したことも理解に苦しむ。

日本学術会議は制度を「政府による研究への介入が著しい」などと批判する声明を出し、応募を認めない大学が相次いでいる。

防衛省はこの状況を重く受け止め、年末に向け見直すべきだ。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/129772?rct=c_editorial

>>2以降に続く)