文在寅(ムン・ジェイン)政権は、意味のある数の慰安婦被害者たちが生きている間に、その恨(ハン=無念の思い)を晴らす機会を持つ最後の政権になる可能性が高い。政府に登録されている従軍慰安婦被害者239人のうち、現在の生存者は35人だけだ。

その平均年齢は91歳。最も若い人で85歳だ。今年に入って5人が死去し、そのうち2人は先日、2日違いで亡くなった。慰安婦被害者の年齢や健康状態を考えれば、いつ悲報があってもおかしくない。

「時間」は慰安婦問題における最大の制約の1つだ。前政権が2015年12月28日に韓日慰安婦合意を発表した時も、関係者らは「慰安婦被害者たちが1人でも多く生きている時に手に届く結果を知らせるには、100%満足でないとしても折衝するしかない」と言っていた。

現政権に留任した外交部(省に相当)の林聖男(イム・ソンナム)第1次官が当時、慰安婦被害者の所を訪れて、「皆さん亡くなってしまったらどうすればいいのですか? そうなってから日本に何を要求しますか? 時間も重要ではないでしょうか?」と訴えた時は、それなりに真摯(しんし)な気持ちがあったと信じたい。

事前に慰安婦被害者たちの十分な信頼関係を得られていなかったことなどは問題だが、韓日慰安婦合意の全過程・結果を一緒くたにして「売国・屈辱・拙速」とレッテルを貼るべきではない。

慰安婦問題に関して韓国の世論が日本に要求していることを「10」とした時、短期間にこれらがすべて受け入れられる可能性はほとんどない。日本に「法的責任を認め、これに伴う賠償金を支払い、首相が真摯かつ正式に謝罪せよ」と要求するのは、北朝鮮に「核を放棄せよ」と言うのとほぼ同じだ。

韓国は公正で正しい主張をしているが、相手が素直に応じる可能性は0%だということだ。「10」ではなく「7−8」を要求しても、それが受け入れられるには、国際世論の形勢などを通じて長い闘いを繰り広げることになる。それでも成否は不透明だ。

このため、これまでの政権のほとんどは、任期初期に慰安婦問題解決への意欲を見せても、一定の時期が過ぎると手を引いた。現実的な限界を認めて日本と折り合いを付ければ「売国奴」とののしられるだけだから、「日本は覚醒せよ」と叫んで未解決のままにしておいた方が政治的に見て安全な方法だからだった。

文在寅政権はこうした過去の政権とは違い、新たな解決策を打ち出すことができるのだろうか。現政権は今、「朴槿恵(パク・クネ)印の韓日慰安婦合意」を「積弊清算対象順位1位」に掲げ、タスクフォース(作業部会)を稼動させて問題点を暴いている。合意文に「最終的かつ不可逆的に」という文言が入った経緯が何で、誰が責任者なのかなどをはっきりさせようとしている。

ここまでは簡単だ。「すっきりした」と世間から拍手を浴びることもある得るだろう。しかし、その後は、何度も約束した通り「文在寅印の慰安婦問題解決法」を提示しなければならない。

野党時代は慰安婦被害者たちと一緒に涙をこぼせば良かったが、国政運営に責任を持つことになったのなら、涙をぬぐう方法を見つけなければならない。それができなければ、あまり時間が残されていない慰安婦被害者たちにまた「希望拷問(実現できないことを知りながら、実現できるかのように希望を持たせ、結果的に苦しめること)をした」と批判を浴びることになるだろう。


2017/09/17 06:09
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