対北 圧力一辺倒でいいか/衆院選 外交・安全保障

衆院選で、外交・安全保障政策は、国際社会における日本の在り方を問う重要な争点の一つだ。安倍晋三首相は「北朝鮮の脅威は国難」と危機感を強調する。有権者は、5年近く続いた安倍政権の外交・安保政策を冷静に採点し、関係する安保法制や、改憲の是非、日米同盟の形についてよく考えたい。

安倍政権は北朝鮮や中国の「脅威」を理由に日米同盟や安保法制を強化してきた。一方、近隣外交を見れば、中国、韓国との間であつれきが目立つ。どうすれば長期的に平和と安定を守ることができるのか。

安倍首相は党首討論会で「日本は北朝鮮と対話し裏切られた。もうだまされるわけにいかない」などと述べ、米国と協調し北朝鮮に圧力を強める方針を示した。

共産党の志位和夫委員長は「(米国が)先制的な軍事力行使で対応したら、破滅をもたらす戦争になる」と主張したが、安倍首相は武力行使を含む「すべての選択肢」を持つトランプ米大統領への支持を表明した。

立憲民主党は公約で、平和的な解決に向けた「外交力」の重要性を強調し、希望の党も「制裁、圧力は挑発ではなく、対話を導く手段」と訴える。北朝鮮問題への対応を誤れば、深刻な事態を招きかねない。各党の主張をじっくり吟味して1票を投じたい。

2015年9月、自民・公明両党は、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案について採決を強行、国会を通過させた。自民党は今回の公約に、自衛隊明記などの憲法改正を目指すとした。

希望の党は安保法制を支持、改憲論議の推進を表明したが、立憲民主、共産、社民3党は、自衛隊の海外展開が広がると強く反対する。

また自民党は公約に、中国や韓国、ロシアなど近隣諸国との関係改善の加速も盛り込んだ。一方、希望の党は公約に「中国、韓国を含むアジア太平洋地域との共生を重視する」と記した。しかし同党公認候補の政策協定書には「外国人への地方参政権付与に反対」と記すなど、同党の排外性も指摘される。

立憲民主党の公約は国際協調や専守防衛を盛り込んだが、準備不足のためか近隣外交に関する具体的な文言は見当たらない。

各党は有権者に選択肢を示し、より突っこんだ論戦を展開してほしい。

ソース:東奥日報 2017年10月14日(土)
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/20171014029638.asp