香港では16日、再び大規模なデモが行われた。前日に林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が逃亡犯条例改正案の審議延期を決めたにもかかわらずだ。香港市民は林鄭長官と中国政府が改正案を撤回するとは信じていない。同長官に対する辞任要求は強まりつつある。

 今こそ米国は中国と林鄭氏に対し、1984年の中英共同宣言で中国側が約束した香港の法制面の自治権を奪い去ることのコストを明確に伝えるべきだ。ドナルド・トランプ米大統領は概ね沈黙を守っているが、共和、民主両党議員は声を上げつつある。ナンシー・ペロシ下院議長(民主)は逃亡犯条例改正案を「恐ろしい」と正しく評し、中国が改正案を押し通す姿勢を貫いた場合、米国と香港の関係を見直すと警告した。

 米国と香港の関係は、1992年に成立した米国・香港政策法で規定されている。同法は香港を中国とは別の関税自治区かつ経済地域とみなし、それに基づき米国は香港に優遇措置を適用している。米国務省は同法の下で、香港に関する年次報告書を公表することが義務付けられている。3月21日に公表された最新の報告書では、香港は優遇措置を正当化する「十分な」水準の中国からの自治を維持しているとしたうえで、その自治権は「減退してきた」としている。

 中国は近年、共産党政権に批判的な香港市民を第三国から連れ去り、勾留するため中国に移送してきた。香港市民は、中国政府が「逃亡犯条例」改正により、批判者を特定し、同国の法律の下で起訴し、その後、中国での審理や処罰のために引き渡しを求める明確な権限を持つことになるのを理解している。また腐敗した中国の当局者らは本土への移送という脅しをかけるだけで、香港の企業から利益を巻き上げることができるようになるだろう。

 改正案に「深刻な懸念」を表明した米国務省によれば、香港で活動する米企業は1300社を超える。また香港における米国の投資額は約800億ドル(約8兆6850億円)で、居住する米国市民は8万5000人に上るという。カート・トン駐香港米総領事は中国の主張に異議を唱え、「当地において投資はできるが発言権はないと言うのは、責任ある者の考えではもちろんない」と語った。

 マルコ・ルビオ上院議員(共和、フロリダ州)、ジム・マクガバン下院議員(民主、マサチューセッツ州)、クリス・スミス下院議員(共和、ニュージャージー州)は先に、「香港人権・民主主義法案」を議会に再提出した。これは主に、中国が約束した自治を香港が享受し続けているかどうか、2047年まで毎年検証するのを国務長官に義務づけるものだ。香港の自治が保障されていない場合、米国の法律の下で香港が受けている優遇措置―関税、査証、法執行上の協力など―はなくなる可能性がある。

 一部には、香港への優遇措置をなくすことで中国を罰するというやり方が、香港を一層傷つけると懸念する向きもある。しかし、ペロシ下院議長の論理は正しい。香港の自治が尊重されないのであれば、なぜ米国の政策で香港を中国と別の扱いにする必要があるのか。

 習近平国家主席が中国の誇りであるべき自由都市、そして、台湾に安心をもたらす自治政府の一例である香港に不必要なダメージを与えようとしているのなら、中国政府を信用することなどできるだろうか。

https://jp.wsj.com/articles/SB11168026957026933972104585370371519790154
ウォール・ストリート・ジャーナル 2019 年 6 月 17 日 12:16 JST

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香港では16日に再び大規模なデモが行われた PHOTO: CARL COURT/GETTY IMAGES

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