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いささか古い話、というよりも、この話題は、いまのところまだ決着していない、交渉過程の途上にあると思っているからこそ、あえて俎上に載せる気持ちになったわけなのだが、その「話題」というのは、「旭日旗」と五輪の観客席をめぐるお話だ。

 発端は、韓国国会の文化体育観光委員会が、8月29日、国際オリンピック委員会(IOC)や東京五輪・パラリンピック組織委員会などに五輪会場内への旭日旗の持ち込み禁止を求める決議を採択したことだった。決議では旭日旗をあしらった道具の持ち込みや応援は「帝国主義に侵略された国家の苦痛の記憶を刺激する」と指摘し、五輪の理念に合わないと訴えた。

 この記事中にある、韓国側からの旭日旗持ち込み禁止の申し入れと決議に対して、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は3日、「旭日旗は日本国内で広く使用されており、旗の掲示そのものが政治的宣伝とはならないと考えており、持ち込み禁止品とすることは想定していない」との方針を明らかにしている。

 この産経新聞の記事が配信されると、ツイッター上の一部クラスタでは、ちょっとした騒動が起こった。

 もっとも、ここでいう「ちょっとした騒動」というのは、本当のところ、たいした騒ぎではない。

 この2ケ月ほど際立って神経質な展開で推移している日韓関係に、神経を高ぶらせている人々の間で、炎上が起こったというだけのことではある。

 おそらく、大多数の日本人は、たいして気にもとめていない。それは韓国側でも同じことだ。

 とはいえ、この旭日旗の問題は、この先に勃発するかもしれないより大きな問題の火種になる可能性を秘めている。

 そんなわけなので、当欄としては、この問題をこれ以上こじれた話にしないためにも、現段階で論点を整理しておきたいと決意した次第だ。

 9月8日の午後9時すぎに、私は以下のようなツイートを発信した。

 《旭日旗が論外な理由。

過去:大日本帝国の軍旗として、侵略と暴虐の記憶を刻んでいるから。

現在:排外主義者による街宣活動の象徴として在日コリアンを威圧するいやがらせのツールになっているから。

未来:五輪での旭日旗の林立を夢見ているのが、いずれも歴史修正主義の旧軍賛美者ばかりだから。》

 このツイートは、当稿執筆の時点で、2624件のRTと5239件の「いいね」を獲得しており、このほか、賛否あわせて109件の返信が寄せられている。いま、「賛否合わせて」と書いたが、正直なところを明かせば、「否」の方がずっと多い。ざっと見たところでは、賛否の比率は1対4くらいではなかろうかと思う。

 もっとも、昨今のツイッター上のコミュニケーションでは、話題が何であれ、賛意を示す意味のリプライは、そもそもあまり投稿されないことになっている。このソーシャルメディアに集まる人々は、何かに反発を覚えたり、誰かの言いっぷりに腹を立てたりした時に限って返事を書く仕様になっている。だから、私は賛否の比率はあまり気にしていない。「いいね」の数も、本気で受け止めてはいない。いずれにせよ、ツイッターは議論の場ではない。どちらかといえば、中学生の雪合戦に近い。手にとった雪玉を手近な誰かに投げつけるという動作そのものが目的になっている。雪玉の性質や重さや投げ方の作法は、この際問題にならない。ただただ生身の人間に向かって質量のある物質を投げつけることの爽快感が、このゲームに参加する人間たちが共有している唯一のプロトコルということになる。

 さて、私が当該ツイートの中で申し述べた見解は、自分では、現段階の当面のまとめとして、おおむね当を得たものだと思っている。

 ただ、補足せねばならない部分もあるといえばある。

 私が、今回、当欄で原稿を書き起こす気持ちになったのは、その「補足」のためだと申し上げてもよい。

 それほどに、この問題は、「補足」しなければならないノイズを多量に含んでいる。

日経ビジネス
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190916-68743950-business-soci