街を歩けばあちこちで十字架が見える韓国。だがなかにはあるまじき行為を強要する教会も──
今、韓国を騒然とさせている光と真理教会のキム・ミョンジン牧師

今年2月、韓国・大邱市から発生した新型コロナウイルスの集団感染は、その原因となったクラスターとして、宗教団体「新天地イエス教会」の名を全国に知らしめた。この教団の布教活動によって新型コロナも一緒に広めていたという実態が明るみになると、教団に対して多くの非難の声が集まったのは記憶に新しい。

そして、その3カ月後、またしても宗教がらみの衝撃ニュースが韓国を駆け巡った。今度は、「光と真理教会」という宗教団体の行き過ぎた信仰訓練が波紋を呼んでいる。

4月28日、プロテスタント教会系のニュースサイト「平和の木」は、光と真理教会の元信者である通報者の発言と、教会の内部資料を元に、この教会内でどのようなことが行われていたか、その悲惨な実態をスクープした。

<脱退信者が教会を告発した理由とは......>

「光と真理教会」は、信仰心を高めるため、さまざまなプログラムを用意しているが、そのなかには「リーダーシップ訓練コース:LTC, Leadership Training Course」と呼ばれる常識では考えられない訓練が日常的に行われているという。

特に、韓国で大きく報道され国民を驚愕させたのが「自分の糞便を食べる」という内容だった。その他にも「生ごみの中に入る」「数人で共同墓地に行きお互いを鞭打ちする」「ヤンスリからソウルまで(約35キロ)、時間内に歩いて帰ってくる」「寝ないでいつまで起きていられるかを競う」など、拷問かと見間違えるような内容が暴露された。

ほかにも梨泰院に多く点在するトランスジェンダーのお店で、「いかに異常なことか説教を説いてくる」などもあり、多様性を認めない人権侵害の面からも批判を浴びている。

記事が出た1週間後の5月5日には、脱退信者とスクープを掲載した「平和の木」が教会を告発する記者会見を開き、さらに多くの注目が集まるようになった。

また5月26日には、地上波局MBCの看板番組である報道ドキュメンタリー『PD手帳』が、「大便を食べさせる教会、奴隷になった信者たち」という衝撃のタイトルで特集番組を放送した。番組内では数名の元信者が内部情報や訓練について語っているが、話題となった人糞を口にした元信者の女性も登場し、被害の内容を明かした。

れっきとしたキリスト教の教会
光と真理教会は、韓国キリスト教長老会平壌老會所属の教会として1995年に牧師キム・ミョンジンが設立した。当初は、アパートの半地下スペースを利用したごく小さな街の教会だったという。その後、何度か移転を繰り返すうちに徐々に大きくなっていき、現在2000人の信者を抱えている。

今回問題視されているリーダーシップ訓練とは、教会内のピラミッド式階級制度で、元信者によると一般信者2000人からリーダーになれるのは200人。リーダーになることはレベルアップを意味し、階級が上がれば上がるほどキム牧師に近づける存在なのだと言う。信者たちはこのリーダーになるべく過酷な訓練にも積極的に挑戦していた。

<過去にも事故を起こしていた訓練>

非人道的ともいえる訓練では、危険な目にあった人や、その後後遺症で苦しんでいる人も多い。2010年に「1日2時間の睡眠しかとらない」訓練を数日続け、意識不明で倒れた女性は、すぐに救急車を呼んでもらえず、その後脳内出血と診断され、今も一人で歩くことが困難な状態だ。また、2016年には「100度のサウナに入ってどれだけ我慢できるか競う」訓練をしていた男性が、全身やけど状態でサウナから助け出された事故も起きている。

このリーダーシップ訓練は、6カ月内に29項目をクリアしなければいけないという。リーダーになりたい信者は訓練内容を逐一リーダーに報告して教えを仰いでいた。軽い訓練ばかりやっていると、リーダーから注意を受けることもある。自分の便を食べることを強制された女性は、証拠としてその時のKakaoTalkでの会話をキャプチャーして提出している。

告発された教会側は、リーダーシップ訓練が行われていたことや、それが過酷であることも認めているが、あくまでも「信者が自発的に行った」として、「強制したわけではない」と強調している。さらに、報道内容は全てマスコミによってわい曲された内容であると訴えている。また、韓国大統領府のホームページに設置された国民の要望を投稿する掲示板「国民請願」に「光と真理教会の声を聴いてください」と書き込み。あくまで無実だという主張を広めるために必死だ。

ニューズウィーク
https://news.yahoo.co.jp/articles/74edcdf0fb28c14a1670fdc8a2e6ee1d5453470d?page=1
6/11(木) 17:31