<不動産価格の安定化を図るべく3年間で20回以上の対策を講じるも効果なし。文大統領と与党はなおも楽観視しているが...>

韓国の保守系最大野党・未来統合党の支持率が4年ぶりに与党「共に民主党」を上回った。世論調査機関リアルメーターの最新調査によると、同党の支持率は36.5%、共に民主党は33.4%だ。

これまでの未来統合党は、国民の支持を集めるのに苦労していた。特に前身のセヌリ党時代に党を率いた朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾後は苦戦続きで、共に民主党より支持率が高かったのは、0.4ポイント差で上回った2016年10月が最後。その直後に朴のスキャンダルが発覚して以降は、セヌリ党から自由韓国党(2017年2月〜20年2月)、未来統合党へと党名を変えてイメージ刷新を図ったが、一貫して共に民主党の後塵を拝していた。

ここへ来て潮目が変わった背景には、政府の不動産政策に対する国民の広範な怒りがある。国民に「一生懸命働けば家を買える」と約束した文在寅(ムン・ジェイン)政権は、ローン規制など急騰する不動産価格の安定化策を3年間で20回以上講じたが、いずれも効果がなかった。

政府と与党はさらなる不動産市場の引き締め策を発表したが、正確な問題分析を欠く急ごしらえの対策なのではないかという懸念が出ている。

例えば、8月10日に表明した新たな対策の1つである「不動産市場監督機関」の設置計画。要するに、不動産市場を監督・管理するための新たな機関を政府が創設するというものだが、本質的に経済問題である不動産価格の急騰を政治的アプローチで解決しようとしているのではないかと懸念されている。

今の政府に必要なのは、拙速な対策を矢継ぎ早に打ち出すことではないはずだ。

政府・与党は楽観視だが

リアルメーターの世論調査では、文在寅大統領の支持率も8月第2週に前週より0.6ポイント低下して43.3%となった。2019年10月第2週以来の悪い数字であり、ここ数週間の漸減傾向に歯止めがかからない状態が続いている。

政府・与党は危機感を強めているかと思いきや、必ずしもそうではないようだ。地元メディアの取材に匿名で応じた共に民主党のある議員は今回の世論調査について、党として問題を認識しているが、住宅価格はいずれ安定化するので、国民の怒りも徐々に下火になるだろうと語った。

文大統領も同様に楽観的な見方をしている可能性がある。文は10日、政府・与党が全面的な不動産対策を打ち出した際、住宅価格の上昇は「落ち着いてきた」と述べた。

ただし、この発言には根拠がほとんどないように見える。現政権下で首都ソウル市内のマンション価格の中央値は52%上昇し、賃貸マンションの保証金は56週連続で上昇している。「落ち着いてきた」という文の発言が、一部で反発を買ったのも不思議ではない。

その間にも国民の不満は高まっていく。ソウルでは過去1カ月に少なくとも4回、政府の不動産政策に対する抗議デモが行われ、数百人規模の参加者があった。8月15日の光復節にも、大規模デモが計画されていたが、当局は新型コロナウイルス対策を理由に集会禁止令を出した。

特にソウルの庶民にとって、マイホームはかなわぬ夢になりつつある。「全国民に平等な環境を準備する」ことを掲げ、当選した文への怒りが噴出するのも当然だ。

Newsweek 2020年8月20日(木)17時30分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/08/post-94225.php

https://i.imgur.com/j1uTmYo.jpg
国会での演説を終え、退出する文在寅(7月16日)

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