(略)

アメリカの映画やドラマでアジア系の俳優に与えられる役は、多くは研究者や学者、あるいはオタクなどの役が多く、「アジア系=オタク、ガリ勉」といったイメージはアメリカの映画・ドラマ史の中で少なからず形成されてきた。

『ベビー・シッターズ・クラブ』は、中学生の女の子5人組が、ベビーシッタービジネスを始めるティーンドラマだ。そのうちの1人、クラウディア・キシは日系アメリカ人。演じるモモナ・タマダは日本からの移民である両親のもとでカナダで育った。

クラウディアは、アートとファッションが好きな、クリエイティブな才能に溢れた人気者だ。絵を描くのが得意な一方、勉強は苦手。その描き方は「アシア系=オタク、ガリ勉」といったステレオタイプにとらわれていない点が画期的だった。

クラウディアと仲良しの祖母は、第二次世界大戦中に強制収容された記憶に今でも苛まれている。そうした日米の歴史を垣間見せるシーンや、あるいは主人公たちがトランスジェンダーの幼い女の子のシッターをするエピソードなどを取り入れることで、本作はコメディの枠にとどまらない、新時代のティーンドラマになっている。

『ベビー・シッターズ・クラブ』は、アメリカのヤングアダルト世代を中心に人気が広がった同名ベストセラー小説が原作。80〜90年代のポップカルチャーにおいて、アジア系の登場人物は極めて稀で、その頃発行されたこの小説のクラウディアの存在は、当時の非白人のティーンに大きな影響を及ぼしたという。

Netflixでは、クラウディアにフィーチャーしたドキュメンタリー『クラウディア・キシ倶楽部』も配信。アートやカルチャーの分野で活躍するアジア系女性のクリエイターが、クラウディアから受けた影響を語っている。

日系の女の子が主人公のクリスマスドラマ

ニューヨークを舞台にしたクリスマスドラマ『ダッシュ&リリー』は、古本屋に置かれた一冊のノートで交換日記を始める10代男女のラブストーリー。

日系の母、白人の父を持つ主人公のリリーは、幼い時に同級生からそのルーツを理由にいじめられ、今でも同世代と馴染むことができないでいる。

リリーはいつも自分で作った少し奇抜な服を着ていて、その点では『ベビー・シッターズ・クラブ』のクラウディアとも似た、クリエイティブな才能を持っている。リリーを演じているのは、日系アメリカ人の俳優ミドリ・フランシスだ。

Netflixが力を入れて毎年数多く発表しているクリスマス作品の中で、アジア系の女の子が主人公の作品がつくられたことは大きな変化だ。アメリカの有名映画批評サイト、ロッテン・トマトでの批評家によるスコアは100%で、各メディアのレビューでも好評を博している。

一方で気になるのは、ホリデーシーズンの行事を通した日本の文化や家族の描き方だ。

白人の男の子であるダッシュは、リリーから「言葉が通じないことがどんなことか体験してほしい」と提案され、日系の女性に囲まれて餅をつくる教室に通う。うまくつくれないダッシュは、リリーから「Listen to mochi(餅の声を聞け)」というアドバイスをもらう。日系の女性たちは、英語を喋らず、「無口で堅物」として描写されている。

「餅の声を聞け」というのは「内なる声を聞く」ことで、ダッシュはそれによって餅づくりに成功する。その後の大事な場面でも鍵となるセリフだ。

物が発するという「声」に耳を澄ませるというのは、アメリカでも大ブームとなったKonMariこと近藤麻理恵の「片づけ術」的でもある。こんまりメソッドは、あらゆるものに神様が宿るという神道の考えに根付いているとも指摘されており、アメリカでは「こんまりブーム」と同時に神道の価値観も広がった。「Listen to mochi(餅の声を聞け)」は、そうした影響を感じさせるセリフだが、日本で一般的に浸透した考え方とは言い難い。

他にも、劇中に登場するお屠蘇や年越し蕎麦、お年玉などの細かい描写が、日本での文化のあり方と齟齬があるように見受けられる。これらは、作り手がイメージする「日本」を表す記号のように使われ、その実態とは異なるステレオタイプを生んでいるようにも感じた。

続きはソースで
https://news.yahoo.co.jp/articles/67039a77de28c8ab111f1ff11d1ffe221a57a261?page=1