奇妙?単純? 韓流の方程式】#27

 韓国ドラマを見ていると突拍子もないシーンを目にすることがある。例えば、事件を追う女性刑事が張り込み中にピンク色のスティックを顔に塗るのだ。一緒に張り込む男性刑事が「一体なにをしているんですか?」と聞くと、女性刑事は「最近の若者はマルチバームも知らないの?」と説明しながらスティックを手渡す。すると同僚の男性刑事もそれを顔に塗り始める。事件の張り込み中にだ。

 これはドラマ「ザ・キング:永遠の君主」に出てくるワンシーンで、いわゆる間接広告だ。同ドラマでは主演俳優も劇中でコーヒーの味を絶賛している。見ていて「このシーン、いらなくない?」と思わなくもない。案の定、ドラマは韓国でも間接広告の多さで反感を買ったが、こうした商品の宣伝は韓国ドラマではよくあること。露骨なので目につきやすい。

■「出来上がった粥に鼻水を垂らす」

「愛の不時着」もヒロインのソン・イェジンがモデルを務めるコスメブランドの美容液を北朝鮮のシーンで使用。その保湿効果を劇中で説明している。唐突だが間接広告の影響は大きく、美容液は通販サイト「楽天市場」の人気ランキングで上位に。劇中に何度も登場したフライドチキンもいい宣伝になっていた。

 間接広告はたびたび視聴者から批判されるが、何げなく登場したビビンバまで炎上したのには驚いた。Netflixで配信されている「ヴィンチェンツォ」(全20話)の8話で主演俳優らが口にする加熱式ビビンバ。日本人なら気にもとめないシーンだが、このビビンバはスポンサーになっている中国企業の商品だった。韓国の視聴者は激怒し、ドラマを見た韓国人女性も憤る。

「最近の韓国ドラマは中国資本が入ってきて、堂々と中国の商品をドラマに登場させます。ビビンバは韓国の食文化なのに」

 韓国では最近も視聴者からの批判で時代劇がわずか2話で打ち切られている。今回、制作側は問題のシーンを迅速に削除し、残り3回分の露出はキャンセルすると表明した。「ヴィンチェンツォ」は制作費が日本円で約20億円という超大作。映画並みの迫力があり、私たち日本人にとってはビビンバのシーンはどうでもよく、むしろドラマが途中で打ち切りにならなくてホッとした。

 韓国には「出来上がった粥に鼻水を垂らす」ということわざがある。最後につまらないことをして物事が失敗するという意味だ。お願いだから、鼻水を垂らしてドラマの世界観を台無しにしないでほしい。

(児玉愛子/韓国コラムニスト)

Rakuten infoseek News / 日刊ゲンダイDIGITAL 2021年4月24日 9時26分
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